COLUMN

Z世代女性の多様な働き方:結婚・出産を前提としないキャリア選択の可能性

働き方

2025.04.06

近年、女性のライフスタイルや働き方に大きな変化が見られています。特に1995年以降に生まれたZ世代の女性たちは、「結婚して子どもを持つ」というライフコースを当然の選択肢と考えるのではなく、自分自身のキャリアや人生の充実を優先する傾向が強まっています。本稿では、結婚やママになることを必ずしも目的としないZ世代女性の働き方の選択肢について、最新のデータを分析しながら考察します。デジタル化が進み、働き方の多様性が認められつつある現代において、Z世代女性はどのようなキャリアパスを描いているのでしょうか。

Z世代の特徴と価値観

Z世代とは一般的に1995年前後から2010年前後に生まれた世代を指します。この世代は、生まれた時からインターネットやスマートフォンが身近にある環境で育ち、デジタルテクノロジーを自然に使いこなすデジタルネイティブです。子どもの頃に東日本大震災を経験していることもあり、現実主義的な視点を持ち合わせているといわれています。

Z世代の特徴として、社会問題への関心が高いことが挙げられます。環境問題やSDGs、LGBTQなど多様性に関する情報に若いうちから触れており、社会的な意識が強い傾向があります[13]。また、多様な価値観を許容する姿勢も特徴的で、座談会などでは自分と異なる意見が出ても、それを否定しない「Z世代の多様性への受容度」が見られています。

仕事に対する価値観

Z世代女性の仕事に対する価値観を見てみると、「ワークライフバランス」を重視する傾向が顕著です。マイナビの調査によると、Z世代は仕事よりも家族や自分の時間を優先する傾向があり、「ワークライフバランスのメリハリを重視する女性が多い」ことが明らかになっています。

採用ブランディングエキスパートが実施した「Z世代就活まるわかり調査2024」によると、「定時で帰れて、プライベートの時間を確保できる会社」を選んだ女性は42.6%で、男性の26.9%を大きく上回っています。また、「ずっと働きたい」と感じるために必要なこととして、「プライベートの時間が確保できる」を選んだ女性は51.9%で、男性の32.4%と比較して約20ポイントも高い結果となっています。

しかし、プライベート重視というからといって、仕事への意欲が低いわけではありません。調査では、「新しいことに挑戦できるかを優先して働きたい」と答えたZ世代女性は52.8%にのぼり、この数字は40歳以上の女性(48.8%)より高くなっています。Z世代女性の多くは、「若手のうちは、仕事を一生懸命やって、なるべく多くのスキルや経験を積みたい」、「平日は仕事にしっかり取り組める方が充実すると思う」といったスキルアップに前向きな意見を持っています。

職場環境への期待

Z世代女性が職場環境に求めるものとして、「ジェンダー差別がない」(21.5%)や「社内の風通しがいい」(52.9%)という項目が挙げられます。これらは男性と比較して明らかに高い数値となっています(男性はそれぞれ4.6%、36.1%)。

また、就職先を検討する際に「社員の男女比率を必ずチェックする」といった声や、「若手のうちから意見が言いやすいこと」「若手でも良い意見は通る素地があること」「自分の挑戦を受け入れてくれること」などを重視する傾向があります。つまり、単に待遇だけでなく、個人の意見が尊重され、挑戦を支援してくれる環境かどうかが重要な選択基準となっています。

結婚・家族形成に対する価値観の変化

多様化する結婚観

Z世代の結婚に対する考え方は多様化しています。マイナビ転職とZ総研の共同調査によると、Z世代の72.1%が将来結婚を「考えている」または「直近で考えている」と回答している一方で、23.0%が結婚願望がないと答えています。

これは決して少なくない数字であり、約4人に1人が結婚を必ずしもライフプランに組み込んでいないことを示しています。特に注目すべきは、マイナビが発表した「ライフキャリア実態調査2022年版」では、Z世代の25.8%が「生涯独身でいるとメリットのほうが大きい」と感じていることです。

独身生活のメリット

独身生活にメリットを感じる理由としては、「お金を自由に使えるから」(63.4%)、「時間を自由に使えるから」(61.5%)、「趣味や好きなことに集中できるから」(59.7%)などが上位に挙げられています。

特にZ世代女性に注目すると、「仕事に集中できるから」(31.6%)と「転居や転職など、自分の環境を変えやすいから」(31.1%)が全世代平均を大きく上回っていることが特徴的です。これは、Z世代女性が独身でいることによって仕事に専念したいという意識が高いことを示唆しています。

結婚後の理想の働き方

結婚を考えているZ世代にとっても、従来のような性別役割分担を前提とした結婚生活ではなく、共働きを基本とした新しいスタイルを志向する傾向が強いです。調査では、結婚後の理想の働き方について「ある」と答えたZ世代は60.8%にのぼり、その内容として「専業主婦にはならず、夫婦で一緒に成長しながらキャリアをデザインしていきたい」という意見が多く見られました。

「結婚したら専業主婦になりたい」という従来型の意見はかなり少数であり、むしろパートナーと相談しながら仕事も家事もバランス良くこなしていきたいという考えが主流となっています。これは、Z世代の6割が「将来、子どもが生まれても父母ともに仕事をしたい」と考えているという調査結果とも一致しており、Z世代女性にとって、結婚後も仕事を続けることは当然の選択肢となっていることがわかります。

結婚・出産を前提としないZ世代女性のキャリア選択肢

会社員以外の働き方:フリーランス・起業への関心

近年、女性が会社員以外の生き方を選択するケースが増加しています。フリーランスや起業、副業といった働き方は、自由な時間や自身のスキルを活かせる点で魅力的です。こうした選択肢が注目される理由として、「もっと自由な時間が欲しい」「自分の得意なことや好きなことを活かしたい」「家庭や育児と両立できる柔軟な働き方がしたい」といった願いがあります。

特に結婚や出産を前提としない場合、自分自身のスキルや才能を最大限に活かし、経済的自立を図るためにこうした選択肢を検討する女性が増えています。「職場の人間関係や環境に悩んでいる」「慣習やルールに縛られたくない」といった理由から、組織を離れて自分らしく働ける環境を求める女性も少なくありません。

自分の強みを活かした起業

女性が起業する際のポイントとして、自分の強みや経験を活かせる業種を選ぶことが重要です。自分の得意分野でのスキルを活かすことで、業界内での競争力を高め、自分の仕事に誇りを持ってビジネスを続けられます。

例えば、料理の腕前を活かしてフードトラックを始めたり、デザインやアートの才能を活かしてクリエイティブ業界で独立することなどが考えられます。Z世代女性は特に、デジタルスキルやSNSを活用した情報発信に長けているため、これらを活かしたオンラインビジネスや、コンサルティング業務などでの起業が向いているケースも多いでしょう。

個人事業主としての道

個人事業主として事業をスタートさせる場合、税務署に開業届を提出し、正式に個人事業主としての活動を始めます。プログラミングやWebライティングなど、自分のスキルや経験を直接活かし、クライアントのプロジェクトを請け負う方法が一般的です。

この働き方のメリットは、比較的安定した収入が見込めることと、クライアントとの長期的な関係を築くことで、実績が積めるだけでなく継続した仕事も期待できることです。特に結婚や出産といったライフイベントを前提としない場合、自分のペースでキャリアを築いていける点が大きな魅力となります。

キャリアの多様化と複数の収入源

Z世代女性の中には、単一のキャリアパスではなく、複数の仕事や活動を組み合わせるポートフォリオワーカーとしての生き方を選ぶ人も増えています。会社員として働きながら副業を持ったり、複数の職種や業界で活躍したりすることで、収入源の多様化とリスク分散を図る方法です。

これは「ワークライフバランス」という言葉よりも、「ライフロールの組み合わせ」という考え方に近く、自分がやりたいことの組み合わせで「自分らしくはたらく」という価値観に基づいています[8]。特に結婚や出産を必ずしも前提としないZ世代女性にとって、自分自身の興味や関心に基づいたキャリア設計が可能となります。

Z世代女性に人気の職種とキャリアパス

結婚や出産を前提としないZ世代女性が選択する職種やキャリアパスには、いくつかの特徴的な傾向が見られます。ここでは、データに基づいてZ世代女性に人気の職種と、その背景について考察します。

ITやデジタル分野での活躍

デジタルネイティブであるZ世代女性は、ITやデジタル関連の職種と相性が良いと言えます。プログラミング、Webデザイン、デジタルマーケティングなどの分野では、場所や時間に縛られない柔軟な働き方が可能であり、スキルベースで評価される傾向が強いため、ジェンダーバイアスの影響を受けにくい特徴があります。

これらの分野は継続的な学習と成長が必要とされますが、Z世代女性の「新しいことに挑戦できるかを優先して働きたい」という価値観[5]と合致しており、結婚や出産というライフイベントに左右されないキャリア形成が可能です。

クリエイティブ産業

デザイン、ファッション、メディア、アート関連など、クリエイティブ産業もZ世代女性に人気があります。これらの分野では個人の創造性や感性が重視され、フリーランスや独立した形での活動も比較的行いやすい特徴があります。

SNSやデジタルプラットフォームを活用したクリエイティブな発信や活動は、ジェネレーション特性としてZ世代が得意とする分野でもあり、従来の枠組みにとらわれない新しいキャリアの形を構築することが可能です。

グローバルキャリア

「転居や転職など、自分の環境を変えやすい」ことをメリットと考えるZ世代女性の中には、国際的なキャリアを志向する人も増えています。海外企業や国際機関、NGOなどでの勤務や、国境を越えたリモートワークなど、グローバルな環境でのキャリア構築を目指すケースが見られます。

結婚や出産を必ずしも前提としない場合、地理的な移動の自由度が高まるため、より広い範囲でキャリア機会を探ることができます。また、日本国内の外資系企業や国際的なプロジェクトに関わる仕事も、グローバルなキャリアパスの一部として選択されています。

社会貢献型キャリア

社会問題への関心が高いZ世代の特性を反映し、環境保護、人権、教育など社会的課題の解決に関わる仕事を選ぶZ世代女性も増えています。NPOやソーシャルベンチャー、CSR部門など、社会的インパクトを生み出す仕事は、「自分らしく働きたい」というZ世代の価値観と合致します。

結婚や出産よりも社会的使命感に基づいたキャリア選択をする女性も少なくなく、専門的なスキルや知識を社会課題の解決に活かすことで、自己実現と社会貢献を両立させたキャリアを構築することが可能です。

Z世代女性の働き方を支える社会的背景

女性の就業率の上昇

日本における女性の就業率は近年大きく上昇しています。生産年齢人口(15~64歳)における女性の就業率は、男女雇用機会均等法が施行された昭和61年(1986年)は53.1%でしたが、平成28年(2016年)には66.0%となり、30年間で約13%ポイント上昇しました[4]。特に平成24年(2012年)から28年(2016年)の4年間では5.3%ポイントの上昇と、この数年の上昇幅が著しいことがわかります。

子育て期の25~44歳の女性の就業率についても、昭和61年の57.1%から平成28年には72.7%と、30年間で15.6%ポイント上昇しています[4]。このような女性の就業率の上昇が、Z世代女性のキャリア意識にも影響していると考えられます。

多様な働き方を可能にする制度の整備

フレックスタイム制度や週休3日制、リモートワークなど、働き方の多様性を支える制度の整備も進んでいます。Z世代は「自分の時間を優先する傾向が強まり、ワーク・ライフ・バランスを重視している」傾向があり、こうした制度を活用することで、自分らしい働き方を実現する可能性が広がっています。

女性の起業を支援する環境

女性の起業を支援する環境も整いつつあります。「女性ならではのニーズや視点を活かしたビジネスモデルが評価され、スタートアップや中小企業でも女性がリーダーシップを発揮する機会が増加しています」[12]。こうした背景は、結婚や出産を前提としないZ世代女性にとって、自分の強みを活かしたキャリア形成の可能性を広げるものとなっています。

Z世代女性のキャリア選択における課題と展望

経済的自立とセーフティネット

結婚や出産を前提としないキャリア選択をする女性にとって、経済的自立は極めて重要な要素です。特に日本の社会保障制度は、従来の家族モデルを前提としている部分があり、単身女性のライフプラン設計には注意が必要です。

老後の年金や医療費、介護など将来の経済的リスクに備えるための計画的な資産形成が重要となります。Z世代女性がこうしたリスクに対応するためには、投資や副業を含めた複数の収入源の確保、継続的なスキルアップによる市場価値の維持向上、そして独自のセーフティネット構築が課題となります。

ワークスタイルの進化とメンタルヘルス

自由な働き方が広がる一方で、メンタルヘルスの管理も重要な課題となっています。フリーランスや起業家としての働き方は自由度が高い反面、孤独感やワークライフバランスの崩壊リスクも伴います。

Z世代女性が持続可能なキャリアを構築するためには、単に働き方だけでなく、精神的・身体的健康を維持するための仕組みづくりも重要です。コミュニティへの参加やメンターシップの活用、セルフケアの習慣化など、包括的なアプローチが必要となります。

多様な選択を支える社会制度の構築

結婚や出産を前提としないキャリア選択をより実現可能にするためには、社会制度のさらなる変革が求められます。現状の税制や社会保障制度は世帯単位で設計されている部分があり、単身者にとって不利な側面があります。

例えば、住宅取得における単身者への支援拡充や、社会保険制度の個人単位化などが考えられるでしょう。多様なライフスタイルやキャリア選択を真に可能にするためには、制度面からのサポートも不可欠です。

新たなキャリアモデルの構築

従来の「学校卒業→就職→結婚・出産→(中断)→復職」という女性のキャリアモデルに代わる、新たなキャリアモデルの構築と可視化も課題です。結婚や出産を前提としないキャリアパスにおいては、長期的な成長戦略やスキルの棚卸し、ネットワーク構築などを含めた、総合的なキャリア開発が重要となります。

企業や教育機関においても、多様なキャリアパスを前提としたキャリア教育やロールモデルの提示が求められるでしょう。特にZ世代女性にとって、自分と似た価値観や選択をした先輩の存在は、キャリア選択の重要な参考となります。

展望:Z世代女性のキャリア革命

社会変革のけん引役としてのZ世代女性

結婚や出産を必ずしも前提としないキャリア選択をするZ世代女性は、その働き方や生き方を通じて、社会変革のけん引役となる可能性を秘めています。多様な価値観を受け入れ、従来の枠組みにとらわれない姿勢は、社会全体のダイバーシティ促進に貢献するでしょう。

テクノロジーとの共存による新たな働き方

AIやロボティクスなどのテクノロジーの進化は、従来の雇用や働き方の概念を大きく変えつつあります。デジタルネイティブであるZ世代女性は、こうしたテクノロジーとの共存を前提とした新たな働き方のパイオニアとなる可能性があります。

技術革新により、より自由度の高い働き方やこれまでにない職種が生まれる中で、結婚や出産を前提としないキャリア設計は、さらなる多様性と柔軟性を持つようになるでしょう。

コミュニティの重要性の高まり

結婚や出産を前提としないライフスタイルを選択する女性が増える中、新たな形のコミュニティや支え合いのネットワークの重要性が高まっています。血縁や婚姻関係に基づかない「選択的家族」や価値観を共有するコミュニティの形成は、Z世代女性のキャリアと生活を支える重要な要素となるでしょう。

まとめ

Z世代女性の働き方は、従来の「結婚・出産を経てキャリアを中断または変更する」というパターンにとらわれず、より多様で柔軟なものになっています。結婚や出産を必ずしも前提としないキャリア設計は、自分の強みや興味を活かした働き方を実現する可能性を広げています。

データから見えるZ世代女性の特徴として、仕事とプライベートのバランスを重視しながらも、職場での成長や挑戦を求める姿勢が挙げられます。また、「仕事に集中できる」ことを独身のメリットと考える割合が高く、キャリアを通じた自己実現を重視する傾向が見られます。

フリーランスや起業、ポートフォリオワークなど、従来の会社員以外の働き方も増えており、自分らしいキャリアを構築する選択肢が広がっています。こうした多様なキャリアパスの実現に向けて、社会全体がZ世代女性の価値観や働き方を理解し、支援する環境を整えていくことが重要です。

Z世代女性の働き方は、単に「結婚しない」「子どもを持たない」ということだけではなく、自分自身の価値観に基づいて主体的に人生を設計するという積極的な選択です。社会全体がこうした多様な選択を尊重し、支援する環境を整えることで、それぞれが自分らしいキャリアを築き、社会に貢献できる可能性が広がるでしょう。