「想像以上に矯正治療がつらい」
「引っ越しが決まり、治療の継続が難しい」
このような理由から、歯列矯正を途中でやめようか検討する人もいるのではないでしょうか。
歯列矯正を途中でやめることは可能ですが、治療をやめることには多くのデメリットを伴うため、おすすめできません。
この記事では、歯列矯正を途中でやめるリスク、およびやめる前に考えるべきポイントを解説します。
歯列矯正を途中でやめるとどうなる?
歯列矯正は、綿密な治療計画を立てて進めるため、治療を途中でやめると後戻りを招き、時間と費用が無駄になってしまいます。
また、歯並びの悪化によって虫歯や歯周病のリスクが高まります。歯列矯正をやめる前に、途中でやめることのデメリットを理解しておきましょう。
歯並びが後戻りする
歯列矯正は、以下の2つの治療で完了します。
- 動的治療:矯正装置で歯を動かし、歯並びを整える
- 保定治療:整えた歯並びをリテーナーで固定させる
これらの治療では、装置を適切に使用できないことが原因で、計画通りに治療が進まないことも少なくありません。
特に、動的治療の直後は歯の状態が不安定であり、歯は元の位置に戻ろうとします。そのため、保定治療が非常に重要であるといわれています。
後戻りの主な原因は「リテーナーの装着不足」です。歯列矯正を中断し、リテーナーの装着をやめた場合は、100%後戻りを起こすでしょう。
虫歯や歯周病のリスクが高まる
歯列矯正を中断した場合、以下の理由で虫歯や歯周病のリスクが高まるおそれがあります。
定期的ケアが不足してる場合は、検診やクリーニングを受けなくなり、口腔内が不衛生になる。
ワイヤー矯正の場合、矯正装置を装着した状態では十分な歯磨きができず、ワイヤーやブラケットの周囲に食べかすや歯垢が蓄積する。その結果、虫歯や歯周病の原因菌が繁殖する。
歯を支える歯槽骨が不安定な場合は歯が動きやすいため、治療前よりも歯並びが悪化する可能性がある。歯の重なりが大きい場合は歯ブラシの毛先が届かず、清掃が不十分になる。
治療の再開が難しくなる
治療を中断し、歯並びが変化している場合は、再度検査をして治療計画を立て直す必要があるため、直ちに治療を再開するのは難しいでしょう。
また、以下のケースでは再矯正ができない可能性があります。
- 歯周病が進行している
- 歯肉退縮(歯肉が減り、歯根が露出した状態)や歯根吸収(歯根部分が溶け、短くなった状態)を起こしている
- 抜歯を行い、隙間が完全になくなる前に治療を中断した
抜歯による隙間は、周囲の歯が傾く原因になり、治療前よりも歯並びや噛み合わせが悪化するおそれがあります。抜歯をする際は、慎重に検討しましょう。
時間と費用が無駄になる
歯列矯正を途中でやめた場合、後戻りや歯並びの悪化を引き起こすため、それまで治療にかかった時間や費用が無駄になります。
歯科医院によっては、歯列矯正には保証期間が設けられています。しかし、一般的に、治療を中断するまでにかかった治療費が返金されることはありません。
事前に治療費を全額支払いしている場合は、差額を返金される可能性がありますが、歯列矯正は自由診療であるため、歯科医院によってルールが異なります。
治療を受ける前のカウンセリングでは、契約内容についてよく確認しておくことが重要です。
矯正治療はキャンセルできるが全額返金は難しい
歯列矯正は、事前に装置や精密検査にかかる費用を支払うことも珍しくないため、治療を中断した場合の返金について気になる人もいるでしょう。
矯正治療の契約をキャンセルすることは可能ですが、一般的に全額返金は難しく、治療の進行状況に合わせて返金されることを覚えておきましょう。
クーリングオフは対象外
クーリングオフは「特定商取引に関する法律」によって定められている制度であり、該当する取引方法であれば、契約締結後8日間以内は解除することが可能です。
しかし、矯正治療は医療行為であり、歯科医師の専門的な知識や判断によって治療方法や費用などが決められるため、クーリングオフの対象外であることを理解しておきましょう。
ただし、矯正治療は、歯科医師と患者の同意のもと行われる治療であるため、強制的に治療が継続されることはなく、契約を解除することは可能です。
契約を解除する際は、既に実施した精密検査や治療、作成した装置の費用は返金されません。
治療の進行状況に合わせた返金
矯正治療費については、如何なる理由で治療を中止する場合でも、治療の進行状況に合わせて清算することが定められており、返金を受けるか不足分を支払うことが一般的です。
なお、公益社団法人 日本臨床矯正歯科医会では、全額支払い済みの場合、以下のように診療報酬の清算目安を提唱しています。
- 全歯の整列:60〜70%程度
- 犬歯の移動:40〜60%程度
- 前歯の空隙閉鎖:30〜40%程度
- 仕上げ:20〜30%程度
- 保定:0〜5%程度
歯科医院によっては、特定の条件下でのみ返金が認められる場合もあるため、契約書をよく確認することが重要です。
参考:矯正歯科患者の矯正歯科医変更に関する規程|日本臨床矯正歯科医会
マウスピース矯正は返金が難しい
歯科医院によって契約内容は異なりますが、ワイヤー矯正の場合は、治療の進行状況に合わせた返金対応が受けられる可能性があります。
一方、マウスピース矯正の場合は、精密検査後すぐにマウスピースが作成されることやオーダーメイドでつくられるため、すでに製作された分の費用を支払う必要があり返金対応が難しいことがほとんどです。
また、転院した場合は、歯科医院の系列が同じであれば、製作済みのマウスピースを使用できる可能性があります。
しかし、系列が異なる歯科医院で治療を受ける際は、新たにマウスピースを製作する必要があるでしょう。
矯正治療をやめたくなる理由
矯正治療に伴う不快感や痛みによって、日常生活に支障が出ることは少なくありません。
また、装置の使用によるストレス、ライフスタイルの変化、治療費の負担増などが理由で治療の中断を考える人もいるでしょう。
事前に矯正治療をやめたくなる理由を理解しておくことで、治療への心構えや対策ができるでしょう。
強い違和感を覚える
矯正治療では、歯に矯正力が加わることで歯周組織に負担がかかり、不快感や痛みを生じることがあります。
特に、治療の開始直後や矯正装置の調整後は、歯に加わる力が大きくなり、食べ物を噛んだ際に歯が浮くような感覚や痛みを感じやすくなるため、食事に影響が出ることも少なくありません。
ワイヤー矯正の場合は、装置を装着した状態で食事をするため、噛んだ際に矯正器具が口内に当たり、違和感が生じることがあります。
定期的な装置の調整や、矯正用ワックスを用いて装置を保護することで、痛みや違和感を和らげることができるでしょう。
痛みに耐えられない
矯正治療中は、以下のさまざまな原因によって痛みが生じることがあります。
- 歯の移動に伴う痛み
- 矯正装置が口内に当たることによる痛み
- 食べ物を噛むときの痛み
- 歯肉炎や歯周炎を発症することによる痛み
- 一時的な知覚過敏による痛み
- 噛み合わせの問題による痛み
痛みに耐えられないときは、以下の対処法を試してみましょう。
- 鎮痛剤を服用する
- 痛みがある部分を冷やす
- 矯正装置を調整してもらう
- 矯正用ワックスを使用する
- 柔らかい食べ物を選ぶ
痛みが長引く場合は、歯周組織が炎症を起こしている可能性も考えられるため、放置せずに歯科医院を受診しましょう。
矯正装置や管理のストレス
歯列矯正の治療期間は長期にわたるため、矯正装置の自己管理がストレスに感じる人もいるでしょう。
マウスピース矯正では、食事や歯磨きの際にマウスピースを着脱する必要があるため、装着時間や保管方法など自己管理が大切です。破損や紛失による装着時間の不足を防ぐためには、正しい洗浄方法でマウスピースのケアを行い、専用ケースで保管することが求められます。
一方、ワイヤー矯正の場合は、着脱や保管によるトラブルの心配はありません。しかし、食事の際は粘着性や硬度が高い食べ物を控えたり、歯磨きの際は装置と歯の隙間を丁寧にブラッシングしたりする必要があります。
生活スタイルの変化や転居
仕事や学業などの生活スタイルの変化や、転勤や結婚などによる引っ越しによって、通院が難しくなるケースもあるでしょう。
転院せず、無理に同じ歯科医院で治療を継続することで、交通費や体力面などの負担が増える可能性があります。
また、通院日数を減らした場合は、歯並びに悪影響を及ぼすリスクが高まります。無理なく通院できる歯科医院へ変更することが、治療の成功につながるでしょう。
転院する際は早めに担当医に相談し、治療費の清算とともに、紹介状、治療継続依頼書(これまでの診断内容や治療費などを記載した書類)を作成してもらうとスムーズに転院手続きを進められるでしょう。
経済的な負担の増加
矯正治療を行う際は、計画通りに歯が動かず、治療が長引くケースも珍しくありません。治療期間の延長によって追加費用が発生した場合、経済的な不安から治療をやめたいと考える人もいるでしょう。
治療を効率よく進め、治療期間の延長を防ぐためには、以下の歯が動きやすい人の特徴を押さえておくとよいでしょう。
- 年齢が若い
- 新陳代謝が高く、歯周組織の代謝が高い
- 歯並びの問題が軽度である
- 歯を動かすためのスペースがある
- 舌や口周辺に悪習慣がない
- 規則正しい生活(決まった時間に睡眠、食事、運動を行う)
- 喫煙をしていない
- 医師の指示を守れる
歯列矯正を途中でやめないための対策
歯列矯正を途中でやめた場合、さまざまなリスクが生じるおそれがあります。
歯列矯正を途中でやめないためには、治療の開始時期、歯科医院や治療方法の選択などを慎重に決めるとよいでしょう。
不安や疑問がある場合は歯科医師に相談し、治療を継続できる環境を整えることが大切です。
開始時期は慎重に決める
歯列矯正の開始時期を検討する際は、転勤、結婚、出産など将来のライフスタイルの変化を考慮して慎重に決めましょう。
治療をスムーズに進めるためには、転院を避けることが大切です。開始するタイミングは、しばらく引っ越しの予定がない時期を選ぶとよいでしょう。
また、妊娠中に歯列矯正を行うことは可能ですが、以下の理由からできるだけ避けることをおすすめします。
- 体調が不安定になりやすく、予定通りに通院できない可能性がある
- ホルモンバランスの変化によって口腔環境が変化し、歯周病のリスクが高まる
- つわりによって十分な歯磨きができない可能性がある
通院しやすい歯科医院の選択
矯正期間は歯並びの状態によって異なりますが、平均的な通院頻度は、以下のとおりです。
- マウスピース矯正:最初は1ヶ月に1回、その後は2~3ヶ月に1回
- ワイヤー矯正:1ヶ月に1回
歯列矯正を効率的に進めるためには、定期的な診察とメンテナンスが欠かせません。治療を継続できるよう、通院しやすい歯科医院を選択しましょう。
定期的なメンテナンスでは、以下のことが行われます。
- 治療計画の確認や調整
- 矯正装置の確認や調整
- 歯と歯茎の確認やクリーニングの処置
- 歯磨き指導、食事の注意点などのアドバイスを受ける
治療方法についてよく理解する
歯列矯正の治療方法には「着脱式のマウスピース矯正」と「固定式のワイヤー矯正」の2種類に分かれます。
治療を継続するためには、それぞれの治療方法の特徴を理解し、症状だけでなく、自分のライフスタイルも考慮して治療方法を選択するとよいでしょう。
- 装置を目立たせたくない
- 治療前と同様に食事を楽しみたい
- 違和感や痛みが苦手
- 金属アレルギーが気になる
- 装置の自己管理ができる
- 複雑な歯列不正がある
- 装置を目立たせたくない(裏側矯正)
- 治療期間を短縮したい
- 装置の自己管理が苦手
歯列矯正以外の選択肢も検討する
歯列矯正中は、歯並びの変化に伴い顔全体の印象が変化し、治療結果に満足する人がいる一方で、望まない顔の変化に不安を抱える人もいるでしょう。
このまま治療を継続してよいか疑問がある場合は、顎まわりに特化した小顔矯正の併用を検討することも選択肢の一つです。
歯列矯正で歯並びを整えても、顎の骨格に問題がある場合は、顔全体が歪んで見えることも少なくありません。
顎や咬み合わせに関する問題は、歯列矯正だけでは完全に解決しないケースもあります。たとえば、顎関節症や全身の姿勢バランスが乱れている場合は、整体や小顔矯正などの別アプローチを併用することも選択肢となるでしょう。「小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」の施術では、全身の骨格や筋肉バランスを整えることで、歯列矯正の効果を高め、顎周りの不調を和らげることが期待できます。自身の症状に合わせた治療法を総合的に検討することが大切です。
歯列矯正に関するよくある質問
歯列矯正をやめようか検討する際、歯列矯正以外の選択肢はないか疑問を持つ人もいるでしょう。
また、治療費の支払いでローンを利用している場合、対応に不安を抱える人も少なくありません。ここでは、歯列矯正をやめる際のよくある質問を解説します。
まとめ
歯列矯正の治療期間は長期にわたるため、やむを得ない事情で治療の継続が難しいケースもあるでしょう。しかし、歯列矯正を途中でやめることは多くのリスクを伴うため、まずは歯科医師に相談することをおすすめします。
不安や疑問を解消することで気持ちが変化したり、相談することで治療計画を調整できたりする可能性があります。後悔せずに治療を継続できるためにも、歯科医師のサポートを受けましょう。