歯列矯正後の後戻りとは?原因は?予防策と日常生活の改善ポイント

歯列矯正後の後戻りとは?

歯列矯正後は、リテーナー(保定装置)の装着不足や、歯並びに影響を及ぼす習癖などが原因で、徐々に歯が移動して元に戻る「後戻り」を引き起こしてしまうことがあります。

歯列矯正治療は、長い時間と高額な費用がかかるため、手に入れた理想の歯並びが後戻りを起こしてしまうと、ショックを受ける人も珍しくありません。

そこで本記事では、後戻りの原因、および予防策と日常生活の改善ポイントについて詳しく解説します。

目次

矯正治療後の「後戻り」とは?

歯列矯正治療は、矯正治療で歯並びや噛み合わせを改善したら終了ではありません。歯は常に動いているため、整えた歯並びを固定して安定させる必要があります。

歯並びを固定できなかった場合は、歯は治療前の位置に戻ってしまうため、後戻りが起きてしまうでしょう。

ここでは、矯正治療後の後戻りの可能性について解説します。

矯正治療前の歯並びに戻ってしまう現象

歯列矯正治療は、以下の2つの治療を行うことで完了します。

  • 動的治療:矯正装置(歯や顎の骨に力をかけて整える装置)で歯を動かして歯並びを整える治療
  • 保定治療:整えた歯並びをリテーナー(矯正治療後の不安定な歯を固定する保定装置)で固定させる治療

特に、動的治療の直後は歯の状態が不安定であり、歯は元の位置に戻ろうとします。そのため、保定期間(保定治療を行う期間)が非常に重要といわれています。

保定期間中にリテーナーの正しい使用ができず、後戻りを起こす人も珍しくありません。

矯正治療法に関係なく後戻りする可能性がある

歯列矯正の治療方法は、以下の2種類に大きく分かれます。

  • マウスピース矯正(着脱式):食事や歯磨きの際に装置の取り外しが可能
  • ワイヤー矯正(固定式):自分で装置の取り外しが不可能

治療法を選択する際、後戻りする可能性について気になる人もいるのではないでしょうか。

しかし、どちらの治療法を選択しても、保定期間中にリテーナーを指示通りに使用できなければ、後戻りを避けることは不可能といわれています。

また、リテーナーを正しく使用していても、歯並びに影響を及ぼす癖や悪習慣を改善できなければ、後戻りする可能性は高いでしょう。

矯正治療後に歯並びが後戻りしてしまう原因

リテーナーの主な種類は、以下の3つです。

  • プレートタイプ
  • マウスピースタイプ
  • フィックス(固定式)タイプ

全体矯正の場合は、取り外しができるプレートタイプとマウスピースタイプ、部分矯正の場合は、取り外しができない固定式のフィックスタイプで治療可能です。

取り外しができる場合は後戻りのリスクが高いと考えられるため、後戻りの原因を理解して予防しましょう。

リテーナーの装着時間不足

後戻りの一番の原因は「リテーナーの装着時間不足」 といわれています。つまり、歯科医師の指示通りにリテーナーを装着することで、後戻りのリスクを大幅に減らすことができるでしょう。

保定期間は矯正治療の期間と同じ、またはそれ以上の期間が必要とされており、1日20時間以上の装着が推奨されています。

取り外しができるリテーナーは、食事や歯磨きの際は取り外すため、装着忘れには注意しなければなりません。

特に、矯正治療を終えてから半年程度は歯が不安定な状態であり、後戻りがしやすいといわれています。歯科医師に指示された装着時間と使用期間はきちんと守りましょう。

リテーナーの変形や破損

リテーナーの変形や破損は、リテーナー本来の役割を果たせないことになるため、後戻りのリスクが高まると考えられます。

変形や破損を防ぐには、以下の点に注意しましょう。

飲食の際は取り外す

装着したまま硬いものや粘着性のあるもの、熱い飲料を摂取すると、破損や変形につながるおそれがあります。

また、透明なマウスピースは着色汚れの原因になるため、見た目が目立つようになるでしょう。装着したまま飲めるものは、冷水、常温の水、無糖の炭酸水のみです。

必ず専用のケースを携帯する

外食の際、専用のケースを携帯せず、リテーナーをティッシュなどに包んで保管すると破損の原因になります。

持ち帰ることを忘れ、破棄されてしまうといった事例もあるため、リテーナーは必ず専用のケースで保管しましょう。

正しい方法で洗浄する

熱湯、入れ歯用の洗浄剤、毛先が普通あるいは硬いタイプの歯ブラシで洗浄すると、変形や破損につながる可能性があります。

水道水、専用の洗浄剤、毛先がやわらかい入れ歯用の歯ブラシを使用しましょう。

リテーナーの着脱が頻繁すぎる

1日のうちにリテーナーの着脱回数が多かったり、食事の後に装着を忘れたりすると、リテーナーの装着時間が不足するため、後戻りを招いてしまうでしょう。

特に、旅行や飲み会といったイベントでは、日常生活と異なる状況になりがちで、装着不足が起こりやすいと考えられます。

後戻りを防ぐためには、以下のルールを決めて食事を楽しむとよいでしょう。

  • リテーナーは食事の直前まで装着する
  • 食後は口腔内ケアを徹底し、速やかにリテーナーを装着する
  • リテーナーを外した際は、必ず専用のケースで保管し、紛失や破損のリスクを防ぐ

頬杖や横向き寝など外からの力

頬杖や横向き寝などは、外部から顎に大きな圧力が加わるため、歯に継続的な負担がかかり、歯が安定せず後戻りを起こす原因になると考えられます。

頬杖や横向き寝などの力の大きさは、矯正装置の力の数倍といわれているため、矯正治療で整えた歯並びは簡単に元に戻る可能性があるでしょう。

頬杖や横向き寝は、片方または両方の頬から圧力が加わるため、前歯が前に押し出され、出っ歯の歯並びになりやすいといわれています。

また、うつ伏せ寝も避けたほうがよいでしょう。うつ伏せ寝は、頭の重さ(体重の約10%の重さ)によって顔面が押しつぶされる状態です。

例えば、体重50kgの人なら約5kgの頭によって顎や歯に負担がかかることになるため、うつ伏せ寝の状態が続くと後戻りのリスクが高まるといわれています。

舌の癖や噛む力の影響

舌で上下の前歯を押す、歯の間から舌を出すといった舌癖(ぜつへき)は、歯に強い力が加わります。舌癖のある人は歯が前に押し出されるため、改善しない限り後戻りしてしまうでしょう。

また、噛む力の強さも歯並びに影響します。もともとの歯並びが開咬(奥歯で噛んだときに前歯が開いた状態)の人は、前歯で噛む力が弱く、顎が後方に押されてしまう傾向があります。

顎の位置の変化に伴い、歯並びも変化するでしょう。噛む力が弱い場合は、口周りの筋肉を鍛える必要があります。

反対に、噛む力が強い歯ぎしりや食いしばりといった噛み癖は、歯に振動を与えて不安定な歯が揺らされたり、歯がすり減ったりする原因になります。そのため、対策しなければ整えた歯並びは乱れてしまうでしょう。

親知らずによる圧力

親知らずは、ほとんどの場合、真っ直ぐ生えることはなく、ほかの歯に圧力を加えながら生えるといわれています。そのため、歯並びに影響を及ぼし、後戻りの原因になる可能性があります。

親知らずがある場合は、歯列矯正治療を行う前に親知らずの抜歯について歯科医師と相談する必要があるでしょう。

親知らずの抜歯には、以下のようなメリットがあります。

  • 親知らずは歯ブラシが届きにくく、汚れがたまりやすいため、抜歯することで虫歯や歯周病のリスクを軽減できる
  • 矯正後に親知らずが歯並びに影響を及ぼす心配がなくなり、後戻りの確率が低くなる
  • 親知らずがない分、歯を並べるスペースを確保しやすくなる

歯周病の影響

歯周病が進行すると、歯槽骨が溶けて吸収される「歯根吸収」を引き起こします。

歯がぐらつき、最終的には歯が抜け落ちてしまうことも少なくありません。そのため、歯周病があると歯が不安定になりやすく、治療計画通りに歯が動かなかったり、歯が元の位置に戻りやすくなったりするでしょう。

歯列矯正の治療中に口腔内の清潔を保つには、毎食後の歯磨きが欠かせません。歯の清掃が不十分になると歯垢が蓄積し、結果として歯周病の発症リスクが高まります。

歯周病がある場合は、歯列矯正治療の前に歯周病の治療をしましょう。また、歯列矯正の治療期間中は、正しい歯磨き方法や定期検診による歯周病予防が大切です。

成長による骨格変化

子どもの歯列矯正治療で後戻りを起こす原因の一つとして「成長による歯や顎の骨格変化」があげられます。顎の成長は成人近くまで続くため、顎の成長とともに歯並びも変化し、後戻りを起こす可能性があるといわれています。

治療が終了した後も、成長に伴う後戻りの可能性について理解しておきましょう。

矯正治療後の後戻りを防ぐ方法

後戻りを起こす原因は、多岐にわたります。そのため、多くの時間と費用をかけて手に入れた理想の歯並びを維持するには、さまざまな対策が必要になるでしょう。

後戻りを起こして歯列矯正治療を後悔しないためにも、後戻りを防ぐ方法を理解し、実践することが大切です。

リテーナーを正しく使う

リテーナーの「装着不足」はもちろん、リテーナーの「紛失」や「破損」といったトラブルも、後戻りの原因になるといわれています。

取り外しができるリテーナーを使用する際は、歯科医師に指示された装着時間と装着期間を守り、以下の点に注意しながら正しく使用することが大切です。

  • 飲食や歯磨きの際は必ず取り外し、正しい方法で着脱する
  • 専用のケースを常に持ち歩く
  • 毎日、正しい洗浄方法でお手入れする

保定期間中は定期的に通院し、適切な処置を受けることが一般的です。受診する際は、歯並びの変化に合わせてリテーナーの調整が行われるため、リテーナーを必ず持参しましょう。

また、リテーナーに異常がないか確認してもらうことも重要です。リテーナーは非常に壊れやすく、少しのワイヤーの歪みやプラスチックの傷や亀裂でも、歯並びに影響を及ぼす可能性があるといわれています。

歯ぎしりや食いしばりを避ける

歯ぎしりや食いしばりといった噛み癖がある場合は、歯に過度な負担がかかるため、後戻りを引き起こす可能性があります。

歯ぎしりや食いしばりといった行為は無意識に行われるため、自然に治ることは期待できません。以下の方法で対策するとよいでしょう。

  • 歯科医院でマウスピース(ナイトガード)を作成し、睡眠中に装着する
  • 歯ぎしりの原因になるストレスを発散する
  • ストレッチ運動で食いしばりにつながる首や肩のこりをほぐす
  • 日中は、上下の歯と歯を合わせないように意識する
  • 頬杖や横向きで寝るなど顎に偏った力が加わる行動は避ける

徹底した口腔ケアを行う

歯列矯正治療を行ううえで口腔内のトラブルを避けるには、毎日のセルフケアが欠かせません。

保定期間中の虫歯や歯周病の発症は、整えた歯並びが変化する原因になるため、治療が計画通りに進まなくなるといわれています。治療の延長を防ぐには、以下のポイントを押さえて口腔ケアを徹底しましょう。

  • 正しいブラッシング方法で毎食後の歯磨きを習慣化する
  • フッ素入りの歯磨き粉、洗口液を使用する
  • 矯正専用歯ブラシ、補助用具(タフトブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス)を使用する
  • 歯科医院で定期的にフッ素塗布やクリーニングの処置を受ける

フィックスタイプのリテーナーは、ワイヤーを歯の裏側に固定するため、外からほとんど目立たないというメリットがあります。

しかし、取り外しができないため、歯磨きの際には特に注意が必要です。歯の裏側は磨き残しが発生しやすく、清掃が不十分になることがあります。

ワイヤーと歯の隙間に汚れが蓄積しないよう、徹底した口腔ケアを行うことが大切です。

自分の癖を治す

矯正治療で歯並びを整えても、以下のような悪い癖が残っていると後戻りを起こすため、改善や対策が必要です。

  • 噛み癖(歯ぎしり、食いしばり)
  • 舌癖
  • 噛む力が弱い、強い
  • 口呼吸
  • 唇や爪を噛む
  • 片側に偏って噛む
  • 頬杖をつく
  • うつ伏せや横向きで寝る

このような癖や悪習慣は、歯並びに影響を及ぼします。

噛み癖は、マウスピースの使用など、適切な処置を受けることで対策できます。舌癖、噛む力が弱い、口呼吸の対処法として、MFT(口腔筋機能療法)があげられます。

MFTによるトレーニングを継続することで、口周りの筋肉を鍛え、舌の位置を正しくできます。注意して直せる癖は意識して改善に努め、きれいな歯並びを維持しましょう。

顎まわりの骨格矯正を併用する

歯列矯正で歯並びや噛み合わせを整えると、口元だけでなく顔全体の歪みが整ったように見えることもあるでしょう。しかし、歯列矯正によって骨格まで変化することはありません。

歯列矯正は、歯の位置を調整する治療法であり、身体の歪みや頭蓋骨、顎のずれを直接的に考慮するものではないからです。骨格に問題がある症例の場合は、歯列矯正だけではきれいな歯並びを維持することが難しいケースもあるでしょう。

骨格に問題がある場合は、顎まわりの骨格矯正の併用がおすすめです。歯並びや噛み合わせの改善だけでなく、歯並びの土台となる顎や顔の歪みが整えられるため、後戻りのリスクを軽減できるでしょう。

小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」では全身のバランスを重視し、足先から頭部まで丁寧にアプローチすることで、単なる歯列矯正では解決が難しい骨格の歪みを根本から改善していきます。力任せに骨格を動かすのではなく、呼吸に合わせた優しい手技で骨の配置を整え、後戻りしにくい理想的なフェイスラインへと導きます。

歯列矯正後の後戻りに関するよくある質問

「後戻り」という言葉は知っていても、発生する確率や発生しやすい期間、後戻りを起こしてしまったときの対処法など、具体的なことまではわからない人も少なくありません。

ここでは、歯列矯正後の後戻りに関するよくある質問について解説します。

矯正した後に後戻りする確率はどのくらい?

歯科医師の指示通りにリテーナーを使用できなかった場合は、矯正した後に後戻りする確率はほぼ100%といわれています。

保定期間は症状によって個人差がありますが、一般的に2〜3年が目安とされています。治療期間の間、1日20時間以上の装着が推奨されているため、継続できない人もいるでしょう。

時間の経過とともに意識が薄れ、指示された装着時間を守れず、後戻りしてしまう人は少なくありません。

後戻りが発生した場合、リテーナーの作り直しが必要になる可能性があります。新しいリテーナーができるまでの間は、リテーナーの装着ができないため、さらに後戻りが進行するリスクがあります。

また、歯ぎしりや食いしばりといった噛み癖、舌癖など、歯並びに影響を及ぼす習癖がある場合も、後戻りする確率は高いでしょう。

歯の矯正の後戻りが発生しやすい期間は?

歯の矯正の後戻りが発生しやすい時期は「矯正治療の終了直後」です。

歯列矯正治療は、歯槽骨と歯根の間にある歯根膜に力を加えることで、歯槽骨が溶けたり新しい骨を形成したりして、正しい位置に歯が移動します。この仕組みから「骨の新陳代謝を利用した治療」といえるでしょう。

矯正治療の終了直後は、歯周組織が非常に不安定な状態です。人間の身体は、治療前の歯の位置を記憶しているため、歯は元の位置に戻ろうとする力がはたらき、後戻りが生じやすい状態といえるでしょう。

新しい骨の形成には時間がかかるといわれています。不安定で歯が動きやすい時期にリテーナーで固定することで、歯や歯周組織に正しい歯並びを記憶させる必要があると考えられます。

戻ってしまった歯並びは自力で治せる?

後戻りした歯並びを無理やり自分で治そうとする行為は、非常に危険です。自己判断で指や器具を使って歯を押したり、無理やり歯に力をかけたりすると歯根吸収を起こす可能性があります。その結果、歯が抜け落ちるリスクが高まります。

また、以前使用していたマウスピースを装着して治そうとする行為もやめましょう。後戻りを起こした歯並びが、マウスピースの型に合うとは考え難いためです。

後戻りが起きた際、再矯正に不安を感じて受診を先延ばしにする人もいるでしょう。しかし、受診の遅れは後戻りの進行につながり、さらに歯並びは元に戻ってしまうと考えられます。

「リテーナーを装着したとき痛みを感じる」「歯と歯の隙間に食べ物が詰まりやすくなった」など、後戻りを感じた場合は、速やかに矯正歯科を受診することが大切です。

再矯正をするときのタイミングは?

再矯正を検討するタイミングは症例によってさまざまですが「後戻りが進行し、リテーナーの効果が得られないとき」に検討されることが一般的です。

また、矯正治療後の顔の変化に不満を持ち、再矯正を検討する人も少なくありません。

再矯正は、噛み合わせの問題を解決し、再び理想の歯並びに近づくための効果的な方法といえます。ただし、再矯正をする際は、以下のリスクがあることを理解しておきましょう。

  • 長期間にわたって歯に強い力が加わることになるため、歯根吸収を起こす可能性がある
  • 骨の量が減少し、歯肉退縮(歯茎が下がる現象)を起こす可能性がある
  • 満足のいく結果が得られるとは限らない

まとめ

正しい方法でリテーナーを使用できなければ、後戻りは避けられません。また、リテーナーを装着していても、歯並びに悪影響を与える習癖が原因で後戻りが起こることも少なくありません。

歯列矯正治療には長い時間を要することから、歯は「元の位置に戻ろうとする力が強い」ということを理解する必要があります。

後戻りの原因を理解し、対策することで、美しい歯並びを維持できるでしょう。

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この記事を書いた人

「小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」代表。オールハンドで美容整形級の変化をもたらすAGOメソッド®を開発。女性の経済的、時間的自由を実現するセラピストスクールは380名以上が受講。

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