「歯並びは整ってきたけれど、よく見ると正中がずれているように感じる…」
このように、矯正中に噛み合わせた際、上下の歯の真ん中が一致せず、不安を抱える人は少なくありません。
正中のずれは、歯や顎関節、顔全体の印象などさまざまな影響を及ぼすことがあります。
この記事では、矯正中に正中のずれが生じる原因と対処法を詳しく解説します。
正中がずれてきた?気になったときに知るべき基礎知識
一見、人間の顔は左右対称に見えますが、実際には左右非対称であることも少なくありません。歯並びや噛み合わせ、顎の発達などによってバランスが崩れることがあります。
矯正中に正中のずれが生じた場合、原因を理解しておくことで、適切に対処できるでしょう。
そもそも正中とは
正中とは、人間の身体を左右に分ける中心線を指し、顔や身体全体のバランスを示す指標です。歯科領域においては、上下前歯の真ん中が一致することが理想とされます。
正中線とも呼ばれる正中は、顔全体のバランスや噛み合わせの機能を考慮するうえで、重要な要素になるでしょう。
通常、上下の歯の真ん中は一致し、歯並びは左右対象であるべきですが、何らかの原因で正中のずれが生じることがあります。このずれは、噛み合わせに悪影響を及ぼし、全身の健康に影響を与える可能性があります。
具体的には、顔が左右非対称になるため、見た目にも影響が出るおそれがあるでしょう。
矯正途中で正中がずれるケースはある
矯正治療中に正中線のずれを感じ、このまま治療を続けてもよいか悩む人もいるでしょう。
矯正中に正中がずれる原因として、以下のことがあげられます。
- 歯の動きに伴い下顎の位置が変化し正中がずれる
- 上顎の正中が鼻中隔と人中からずれる
- 下顎の関節が吸収、変形することによって正中がずれる
- 正中の位置を合わせない噛み合わせを目的とする場合
原因によって対処法は異なり、改善には専門的な技術が必要になることがあります。正中のずれが生じた場合は、早めに歯科医師に相談し、適切な処置を受けることが重要です。
矯正中に正中がずれてきたときの対処法は?
歯科矯正中に起こり得るトラブルには、さまざまなパターンがあります。正中がずれてきたと感じた際は、早めに歯科医院を受診し、歯科医師に相談することが重要です。
正中のずれの原因を明確にし、適切な診療を受けることで改善が期待できるでしょう。
矯正装置の再調整
骨格自体に問題がない場合は、矯正装置の再調整によって歯を少しずつ移動させることで、正中のずれを改善できる可能性があります。
ワイヤー矯正に比べ、マウスピース矯正は通院頻度が少ないというメリットがありますが、正中のずれが生じた際には、早めに歯科医院を受診しましょう。受診せずに放置すると、正中のずれが大きくなり、改善に時間がかかるおそれがあります。
特に、マウスピース矯正の一つであるインビザラインは、審美性に優れているため希望する人も少なくありません。
通院頻度は2〜3ヶ月に1回程度であるため、正中のずれがないかを患者自身で定期的に確認することが大切です。
ゴムかけの使用
正中のずれを改善する目的で行うゴムかけは「正中ゴムかけ」または「正中斜めゴム」と呼ばれます。
この方法では、上顎の犬歯付近にゴムを引っかけ、下側の犬歯付近までゴムを引っ張り、斜めにかける方法です。上下の歯のずれ方によっては、ゴムをかける位置が変わることもあるでしょう。
ゴムかけのデメリットは、口を開けた際、ゴムが見えてしまうことです。見た目が目立つことから、治療を避けたいと考える人も少なくありません。
しかし、症例によってはゴムかけを使用せずに改善することが難しいケースもあります。ゴ厶かけを行う際は、治療期間を延長させないためにも、決められた装着時間を守ることが大切です。
セラミックの被せ物の使用
左右の歯の大きさが原因で正中にずれが生じている場合、被せ物を使用して歯の形状を整える方法があります。
一般的に、使用される被せ物の多くは、審美性に優れるセラミック素材です。ただし、セラミックの被せ物を使用する際には、いくつかのデメリットがあるため、歯科医師とよく相談して検討しましょう。以下が主な例です。
- 健康な歯を削る必要がある
- セラミック素材は硬いが、大きな力が加わると割れるおそれがある
- セラミックには寿命があり、保険適用外のため、長期的な医療費負担が発生する可能性がある
- 歯の色は個人差があり、セラミック歯を理想の色に仕上げられない可能性がある
外科的手術の検討
骨格の異常が原因で正中のずれが生じている場合、歯列矯正だけでは改善が難しく、外科的手術が必要になることがあります。
この手術では、顎の骨を切開し、適切な位置に顎を移動させることで、骨格的な問題を解消します。
手術後には矯正治療を行うため、全体的な治療期間は長くなる傾向がありますが、顎の位置が正しくなることで大きな改善が期待できるでしょう。
特に、顎の骨が発達段階にある子どもの場合は、顎の骨の成長を考慮しながら、顎が左右対称になるよう矯正治療を進めます。
そのため、子どもの正中のずれが気になる場合は、早めに専門医の診察を受けることで将来的に外科的手術を回避できる可能性があります。
矯正中に正中のずれが生じる原因
矯正中に正中のずれが生じた際、原因がわからず不安になる人もいるでしょう。
矯正中に正中のずれが生じる原因はさまざまであり、原因によって対処法は異なります。原因を理解しておくことで不安が軽減され、落ち着いて対応できるでしょう。
左右の噛み合わせの違い
以下のことが原因で、左右の噛み合わせに違いが生じ、正中のずれを引き起こすことがあります。
- 歯の大きさが左右で異なる
- 八重歯や過剰歯がある
- 生まれつき、永久歯の本数が少ない
- 顎の骨が歪んだり曲がったりしている
- 片側咀嚼、頬杖をつくなどの癖がある
噛み合わせが左右非対称である場合、口元の歪みや正中のずれが生じるリスクが高まります。
また、噛み合わせが悪くなる可能性が高く、肩こり、顎関節症、胃腸への負担など、健康への影響も懸念されるため、適切な治療を受けることをおすすめします。
歯の大きさの違い
以下のような理由によって歯の大きさが左右で異なる場合、歯が左右対称に並ばず、正中のずれが生じるおそれがあります。
- 左右の歯の大きさが平均的なサイズより小さい
- 左右どちらか片方のみ八重歯が生えている
- 埋伏歯や永久歯の先天性欠如などによって歯の本数が異なる
歯の大きさの違いは、歯列矯正のほか、歯を削る、セラミックの被せ物をするなどの治療によって対策することができます。
ただし、健康な歯を削るデメリットがあるため、経験豊富な歯科医師によく相談したうえで治療を検討しましょう。
歯の抜歯・非抜歯の影響
歯列矯正において、歯を動かすスペースを確保する必要があるため、症例によっては抜歯が必要になるケースがあります。
しかし、不必要な抜歯を行った場合、歯が内側に後退することで口元に凹みができ、人中と正中の位置がずれるおそれがあります。
また、非抜歯で無理に治療を進めた場合、歯を並べるスペースが確保できず出っ歯になり、正中の位置に影響を及ぼす可能性も否定できません。
抜歯は、歯をきれいに並べるための有効な手段であり、非抜歯は、健康な歯を残して歯並びを整えられるメリットがあります。
ただし、抜歯・非抜歯は見た目に影響することがあるため、慎重に判断することをおすすめします。
装置の装着時間・ケア不足
マウスピース矯正では、食事や歯磨きの際にマウスピースを着脱する必要があるため、装着時間や保管方法など自己管理が大切です。
基本的には、食事と歯磨き以外の時間はマウスピースを装着をすることが求められます。装着時間の不足は後戻りを招き、正中のずれを引き起こす可能性があるため、装着忘れに注意しましょう。
また、破損や紛失による装着時間の不足を防ぐためには、正しい洗浄方法でマウスピースのケアを行い、専用ケースで保管することが重要です。
一方、ワイヤー矯正の場合は、食事の際は粘着性や硬度が高い食べ物を控えたり、歯磨きの際は装置と歯の間を丁寧にブラッシングしたりすることでトラブルを未然に防ぐことができます。
顎骨や骨格の要因
顎の骨は歯を支える土台であり、顎の骨格自体に歪みがある場合には、人中や正中の位置にずれが生じる可能性があります。
また、顎のサイズが歯に対して大きかったり小さかったりする場合も、正中のずれを引き起こすリスクがあります。
顎の骨の異常は、遺伝的要因がほとんどですが、日常生活における癖が原因で顎が変形することも珍しくありません。
顎の骨格が歪んでいる状態で正中を合わせる治療を行った場合、さらに顔のバランスが崩れ、噛み合わせが悪化するおそれがあります。そのため、顎の骨に問題がある場合は、顎の骨の位置を調整する外科的手術が必要になるケースもあるでしょう。
正中の位置がずれることで起こる問題
正中のずれが原因で顔のバランスが崩れることがあり、予想外の顔の変化に不満を持つ人も少なくありません。
また、噛み合わせが悪くなった場合は、顎関節や歯に負担がかかり、全身の健康に影響を及ぼすおそれがあります。
ここでは、正中の位置がずれることで起こる問題を解説します。
笑顔や顔全体の印象に影響がある
正中と人中の位置がずれることによって、笑顔や顔全体の印象が左右非対称に見えることがあるため、コンプレックスを抱える人もいるでしょう。
見た目の問題は、社会生活や人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります。正中と人中の位置を揃えることで、以下の変化が期待できるでしょう。
- 左右対称に近づき、顔全体のバランスが整う
- 美しい口元になり、自然な笑顔に見える
- 口元や顔全体の歪みが解消され、自分に自信が持てるようになる
顎関節や歯の負担が偏る
正中のずれは、噛み合わせの悪さを引き起こし、顎関節や歯の負担が偏るリスクが高まります。
噛み合わせが悪いと、食べ物を噛む際に顔全体に加わる力が不均等になり、顎の骨格の歪みを生じることがあります。その結果、顎関節に負担がかかり、下顎の位置が左右どちらかに傾き、健康や見た目に影響を及ぼすおそれがあるでしょう。
また、噛み合わせの悪さによって、特定の歯に負担がかかると、歯茎の炎症や痛みを生じることがあります。
一部の歯に偏って噛み続けた場合、歯が徐々にすり減り、噛み合わせがさらに悪化することになります。その結果、歯根膜炎や歯根吸収などのリスクも高まるでしょう。
治療後の満足度が下がる
歯並びを整えても正中の位置がずれている場合は、治療結果に満足できない人もいるでしょう。
歯列矯正は、歯の位置の変化に伴い、口周りの皮膚の位置も変化するため、顔全体の印象が変わったように見えることがあります。
求める仕上がりの完成度には個人差があり、ほんのわずかの正中のずれや顔の歪みに納得できず、悩みを抱える人も少なくありません。
治療後の満足度を低下させないためには、カウンセリングの際、信頼できる歯科医師と十分にコミュニケーションを取り、治療後の顔つきの変化を考慮することが重要です。
矯正中の正中ずれを防ぐためのポイント
せっかく時間と費用をかけて理想の歯並びを手に入れたにもかかわらず、正中がずれて顔のバランスが崩れてしまったらショックですよね。
矯正中の正中ずれを防ぐためのポイントを押さえ、実践することで、満足のいく治療結果が得られるでしょう。
綿密な治療計画と診断を受ける
綿密な治療計画や診断を受けるためには、歯や顎の骨の位置関係や大きさを詳細に把握することが重要であり、さまざまな精密検査を受ける必要があります。
精密検査の内容には、以下のようなものがあります。
- レントゲン撮影
- CT検査・歯型取り
- 口腔内写真
- 顔面写真
- 口腔内スキャン
これらの検査が不十分な場合、治療のリスクや治療後の仕上がりを予測することが難しいケースもあるでしょう。
矯正中の正中のずれを防ぐためには、精密検査が受けられる設備が整っており、治療過程で起こる顔の変化についてシュミレーションを行う歯科医院で治療を受けることをおすすめします。
定期的な診察を欠かさない
矯正中の正中は、治療の経緯や患者の状況などによって変化する可能性があります。
できるだけ治療計画に沿って歯列矯正を進めるためには、定期的な診察が不可欠です。
歯科医師の指示に従って定期的に通院し、以下のメンテナンスを受けましょう。
- 歯や正中の状態を確認し、必要に応じて矯正装置の調整や治療計画の修正を行う
- 矯正装置に異常がある場合、修復や調整を行う。早期に発見することで作り直しを避けられる
- クリーニングを受け、虫歯や歯周病を予防する
- 歯磨き指導、食事の注意点などアドバイスを受ける
治療後も保定装置を装着する
矯正治療によって整えた歯並びを固定するためには、矯正治療後はリテーナー(保定装置)の装着が不可欠です。装着期間は、症状や年齢などによって個人差がありますが、一般的に約1〜3年とされています。
1日20時間以上の終日装着を約1年、その後も就寝時の装着を約1年は継続し、指示された保定期間が終了した後も可能な限り装着することで後戻りや正中のずれを予防できるでしょう。
保定期間が長ければ長いほど美しい歯並びを維持できるため、夜間の装着だけでも継続することをおすすめします。
歯並びに合ったリテーナーを正しく装着し、医師の指示どおり保定期間をきちんと守ることが大切です。
片側咀嚼やうつ伏せ寝の習慣を見直す
片側咀嚼やうつ伏せ寝といった習慣は、顎に大きな圧力が加わるため、歯に継続的な負担をかけるため、正中のずれが生じる可能性があります。
片側咀嚼の癖がある場合、噛んでいる側の筋肉ばかりが鍛えられることになり、顔の歪みを引き起こす可能性があります。顔の歪みは、顎の骨格の歪みや正中のずれにつながることも少なくありません。
また、うつ伏せ寝は、頭の重さによって顎や歯に負担がかかることになります。うつ伏せ寝の状態が続くと後戻りのリスクが高まるため、正中の位置がずれるおそれがあります。
日常生活における習慣を見直すことで、正中のずれが生じるリスクを軽減することができるでしょう。
正しい舌のポジションを意識する
舌の位置が歯並びに影響を及ぼすことも少なくありません。
舌癖がある場合、舌が正しい位置よりも低い低位舌の状態になっています。舌が歯に当たり、強い力で歯を前に押し出すため、後戻りを起こす可能性が高く、正中の位置がずれるリスクが高まります。
また、舌癖は口呼吸を引き起こし、歯並びに影響を及ぼすことがあるため、舌癖を改善しない限り後戻りを防ぐことは難しいでしょう。
舌癖や口呼吸を改善するためには、MFTトレーニング(口腔筋機能療法)が有効です。舌や口周りの筋肉を鍛え、正しい舌のポジションを覚えることで、後戻りや正中のずれを防ぐことができるでしょう。
以下の記事では、舌の正しい位置の重要性と、ポジションの直し方について解説します。健康的な舌の位置を目指すためにも、ぜひ参考にしてください。
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顎まわりに特化した小顔矯正の併用
人間の顔は完全に左右対称ではありません。これは、歯並び、顎や頭蓋骨などの骨格の歪みが影響しているためです。
歯列矯正は主に、歯の位置を調整することを目的としており、顎や頭蓋骨のずれを直接的に改善する治療ではありません。骨格に問題がある症例の場合は、歯列矯正だけでは正中のずれを予防することは難しいでしょう。
骨格自体に問題があり、外科的手術に抵抗がある場合は、顎まわりに特化した小顔矯正の併用がおすすめです。
患者の身体的負担が少なく、歯並びの土台となる顎や顔の歪みが整えられ、後戻りや正中のずれが生じるリスクを軽減できるでしょう。
「小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」では、歯列矯正だけでは対応しきれない顎関節や頭蓋骨の歪み、首や肩のバランスといった全身的な要素にアプローチしています。強い力で顎を押し込むのではなく、骨格や筋肉の歪みを解消しながら顎の配置を整えていくので、正中ずれを防ぐうえでも効果的です。矯正治療と組み合わせれば、噛み合わせだけでなく全身の姿勢や筋膜バランスをサポートでき、より安定した正中位置を実現できます。
矯正による正中のずれに関するよくある質問
正中がずれたまま治療が終了し、不安を抱える人は少なくありません。
ここでは、矯正による正中のずれに対する疑問を解説します。セルフチェック方法を定期的に実践し、正中のずれの許容範囲を理解することで不安が軽減するでしょう。
まとめ
顔が完全に左右対称であることは珍しく、正中のずれが許容範囲とされる2mm以内でも、完璧を求める人にとっては気になることもあるでしょう。
自分が納得できる治療を受けるためには、歯列矯正による顔の変化や正中の位置について、歯科医師と相談してから治療を開始することが大切です。
正中のずれを治療する際は、原因を明確にし、適切な治療を受けることで改善が期待できるでしょう。