すきっ歯とは、歯と歯の間に隙間ができる歯並びのことであり、前歯の中央に隙間ができる正中離開と、全体的に隙間ができる空隙歯列の2つのタイプがあります。
すきっ歯は見た目に影響を及ぼすだけでなく、隙間から空気が漏れることで滑舌が悪くなるため、コンプレックスを抱える人も少なくありません。
この記事では、すきっ歯の原因と放置するリスク、および対処法を解説します。
急にすきっ歯になった原因は?
すきっ歯ができる原因には、歯周病や虫歯による歯の欠損、歯並びに悪影響を及ぼす口腔習癖などさまざまなものがあります。
原因に合わせた対処法を行うことで、すきっ歯の改善が期待できるでしょう。
ここでは、すきっ歯になる原因を詳しく解説します。
歯周病
歯周病は、歯垢(プラーク)の中の細菌が出す毒素によって炎症が起こり、歯を支える歯槽骨が溶ける病気です。進行すると歯がぐらついて移動し、歯と歯の間にスペースが生じるため、すきっ歯になるおそれがあります。
一度破壊された歯槽骨は、自然に元の状態に戻ることはありません。しかし、歯科医院でクリーニングを受けることで歯垢や歯石を除去し、歯周病の進行を抑えることは可能です。
口腔内の清潔を保つためには、毎日の歯磨きによるセルフケアも欠かせません。歯ブラシだけでなく、デンタルフロス、歯間ブラシなどの補助用具も使用することで、効率的に歯周病菌を減らすことができるでしょう。
加齢
年齢とともに歯や歯肉、歯槽骨の細胞の活性は低下します。その結果、以下の変化が起こるため、歯と歯の間に隙間ができやすくなります。
- 歯茎が下がり、歯根が露出する
- 歯槽骨や顎骨の骨密度が低下する
- 口周りの筋肉が衰える
歯茎が痩せ、歯槽骨の高さが下がると、歯と歯の間の隙間が黒い三角形に見えるブラックトライアングルが形成されやすくなります。
個人差はありますが、30代頃から現れ始め、40代以上になると目立つようになり、悩みを抱える人も少なくありません。
見た目の問題だけでなく、食べ物が挟まりやすくなったり、発音が不明瞭になったりすることもあるため注意が必要です。
親知らずの悪影響
以下のような親知らずの生え方は、すきっ歯を引き起こす原因になります。
- 親知らずが横向きに生え、歯茎の中に埋まっている
- 隣の歯を押すようにして生えている
このように、親知らずの多くは、ほかの歯を押しながら生えるため、歯並びに悪影響を及ぼし、歯と歯の間に隙間ができやすくなります。
また、親知らずは歯ブラシが届きにくく清掃が行き届かず、汚れがたまりやすいため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
歯列矯正を行う際は、親知らずの存在が治療の妨げになるケースもあるため、抜歯を検討する際は、歯科医師とよく相談しましょう。
奥歯の欠損
奥歯の欠損が原因で歯列全体のバランスが崩れ、すきっ歯が生じることがあります。
重度の歯周病や虫歯などによって奥歯を失った場合、前歯を使って食べ物を噛むようになるため、前歯に大きな負担がかかることになり、斜めに傾くおそれがあります。
また、奥歯を失った状態を放置すると、残っている歯が後方に傾くことがあるため、前歯に隙間ができやすくなるでしょう。
一般的に、歯は奥歯から失われる傾向があり、歯周病と虫歯は歯を失う2大原因です。
歯周病と虫歯の早期発見、早期治療がすきっ歯の予防につながるため、定期検診を欠かさないことが大切です。
ホルモンバランスの変化
妊娠や加齢に伴うホルモンバランスの変化は、歯にさまざまな影響を及ぼし、すきっ歯の原因になることがあります。
妊娠中は女性ホルモンが増加し、虫歯や歯周病にかかりやすくなります。女性ホルモンは、妊娠の準備や維持など重要な役割がある一方で、歯周病菌や虫歯菌を増殖させる作用もあるため、歯に悪影響を及ぼすことも少なくありません。
また、女性ホルモンには骨を形成する作用もあり、加齢とともに女性ホルモンは減少します。骨粗鬆症を発症した場合、歯槽骨がもろくなるため歯を失うリスクが高まるでしょう。すきっ歯や骨折を予防するためにも、専門医のもとで適切な治療を受けることをおすすめします。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしりや食いしばりといった噛み癖は、歯に振動を与えて歯が揺らされ、歯並びに影響を及ぼすため、すきっ歯を引き起こす原因になります。
また、歯周病を発症している場合、炎症が生じている歯茎に過度な力が加わり、炎症を悪化させるため、歯周病の進行を早める要因にもなります。歯が揺らされて歯周ポケットが深くなるため、汚れや細菌が侵入しやすくなるでしょう。
噛み癖は、就寝中に無意識に行うことがほとんどであるため、歯科医院でナイトガード(マウスピース)を作成するなど適切な処置を受けて対策することをおすすめします。
舌癖
舌の位置が歯並びに影響を及ぼすことも少なくありません。
舌癖がある場合、舌が正しい位置よりも低い低位舌の状態になっています。舌が歯に接触し、強い力で歯を前に押し出すため、すきっ歯を引き起こす原因になります。
また、舌癖は口呼吸を引き起こし、歯並びの悪化、歯周病や虫歯のリスクを高めるため、舌癖が習慣化している場合は適切な対処法で改善したほうがよいでしょう。
舌癖を改善するためには、MFTトレーニング(口腔筋機能療法)が効果的です。舌や口周りの筋肉を鍛え、正しい舌の位置を覚えることで、すきっ歯を防ぐことができるでしょう。
低位舌や舌の誤った位置は、口呼吸や歯並びの悪化、滑舌への影響などさまざまな問題を引き起こしかねません。以下の記事では、舌の正しい位置の重要性について解説していますので、参考にしてください。
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口呼吸
口呼吸が習慣になっている人や、口を閉じて鼻呼吸をすることが難しい人は少なくありません。
口呼吸は、舌の位置が下がるため、舌の圧力で歯が前方に押し出され、すきっ歯の原因になることがあります。また、唾液の分泌が減少して歯の自浄作用が低下し、口内が乾燥しやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まるでしょう。
口呼吸は、姿勢の悪さや免疫力の低下など全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
「小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」では、舌骨筋群と背骨の連動を重視し、舌の正しい位置取りをサポートします。
低位舌や口呼吸を改善することで、前歯への余分な圧力を減らすことが期待できます。セルフケアだけでなく、専門家の指導によって舌癖の改善に取り組むことが大切です。
矯正治療後の後戻り
矯正治療後は、後戻りを防ぐため、リテーナーを装着して保定治療を行います。保定期間は約1〜3年と長期にわたるため、リテーナーの装着不足が原因で歯並びが乱れ、すきっ歯が生じることも珍しくありません。
マウスピース矯正のインビザラインは、審美性に優れ、通院回数が少ないなどのメリットがあることから、希望する人も多い治療方法の一つです。しかし、マウスピースの自己管理ができないために後戻りを起こすことも少なくありません。
指示されたリテーナーの装着時間と装着期間を守り、保定期間の終了後は、可能な限り夜間の装着を継続しましょう。
また、歯列乱れの原因(姿勢や習癖)が改善されなかった場合、再度歯が動いてしまいます。
「小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」では、全身の骨格バランスを整えることで矯正後の歯列を安定させるサポートが可能です。後戻りを防ぐためにも、矯正終了後も根本的な原因にアプローチすることが重要となります。
顎関節症の急性症状
「口を開けるとき顎やこめかみが痛い」
「口を開けるとカクッと音が鳴る」
すきっ歯でこのような症状がある人は、顎関節症が疑われるかもしれません。
すきっ歯がある場合、上下の歯が正しく噛み合っていないことが多く、噛み合わせのバランスが悪くなります。その結果、咀嚼筋に負担がかかり、 顎関節に加わる負荷が大きくなるため、顎関節症を引き起こすリスクが高まります。
顎関節症が突然悪化すると、噛む際の筋肉バランスが崩れ、特定の歯に過剰な力がかかり、歯列が開くことがあります。急激にすきっ歯が目立つ場合、顎関節周辺の炎症や痛み、開口障害など他の症状が同時に出現することも多いです。「小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」では、足先から頭蓋骨まで全身的に調整することで顎関節への負荷を軽減し、歯列や咬み合わせを安定化させることを目指します。顎関節症が疑われる際は放置せず、専門家の診断と適切なケアを受けるようにしましょう。
すきっ歯を放置するリスクとは
すきっ歯を放置することは、見た目や発音の問題、虫歯・歯周病のリスク、消化器官への影響などさまざまなデメリットがあります。
コンプレックスや全身の不調を引き起こす原因になるため、すきっ歯がある場合は早めに治療を受けたほうがよいでしょう。
印象の変化によるコンプレックス
すきっ歯は、口元にコンプレックスを抱える原因となり、笑顔や口を開けることに抵抗を示す人も少なくありません。食事の際は、食べ物が隙間に挟まりやすいため、食後の歯のチェックが欠かせない人もいるでしょう。
すきっ歯のコンプレックスが原因で俯きがちになったり、会話の際に相手の目を見なかったりすると「感じが悪い」「暗そう」などネガティブな印象を持たれる可能性があります。
すきっ歯は見た目の問題だけでなく、社会生活の質や健康面にも悪影響を及ぼすことがあります。すきっ歯を改善することで笑顔になる機会が増え、明るく清潔感がある印象を与えられるでしょう。
虫歯・歯周病のリスクや悪化
すきっ歯は、歯と歯の隙間に食べかすや汚れがたまりやすいため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
また、歯磨きの際は歯ブラシの毛先が届きにくく、磨き残しが発生することも少なくありません。清掃が行き届かず歯垢が蓄積すると、細菌が繁殖して虫歯や歯周病を発症しやすくなります。すでに虫歯や歯周病がある場合は、症状の悪化を招くでしょう。
歯周病は自覚症状が乏しく、重度に進行した時点で気づくケースも珍しくありません。重症化して歯がぐらついたときには、歯槽骨が溶けた状態まで進行しています。
自身の歯を残すためにも、定期検診での予防処置や早期発見が非常に重要です。
発音に支障がでることがある
すきっ歯の人のなかには、自分では普通に話しているつもりでもうまく発音できず、何度も聞き返された経験がある人もいるでしょう。
すきっ歯の場合、歯と歯の隙間から空気が漏れるため、発音が不明瞭になることがあります。特に、息を使って発音する「サ行」や「タ行」、英語の発音に影響が出やすいです。
滑舌の悪さがコンプレックスとなって自信を失い、会話を避けるようになると、社会生活や人間関係に支障が出る可能性も否定できません。
すきっ歯を改善することで歯の隙間がなくなり、滑舌がよくなるため、人との会話を楽しめるようになるでしょう。
消化器官に負担が大きくなる
すきっ歯が原因で噛み合わせが悪くなることがあり、食べ物をしっかり噛み砕くことが難しくなります。食べ物を細かくせずに胃や腸に運ばれると、消化器官に負担がかかり、胃もたれや消化不良を引き起こすリスクが高まります。
また、咀嚼回数が減少することで唾液の分泌も低下し、唾液による消化作用が不十分になるでしょう。
すきっ歯を改善することで噛み合わせがよくなり、歯全体を使って食べ物をしっかり噛めるようになります。その結果、食べ物を細かくかみ砕いたり、唾液の分泌が増えて食べ物の消化が促されたりするため、胃腸の負担を軽減できるでしょう。
すきっ歯になったときの治療法
すきっ歯の治療方法は、大きく分けて以下の2種類があります。
- 歯列矯正治療:歯並びや噛み合わせを整えることによって隙間を埋める治療
- 補綴治療:歯のサイズを大きくし、隙間を埋める治療
これらの治療は矯正歯科で受けられます。すきっ歯がある場合は、早めに歯科医師に相談しましょう。
歯並びや噛み合わせの調整
すきっ歯の多くは、歯列矯正治療によって歯を正しい位置に移動させることで改善が期待できます。
歯列矯正の治療法は「着脱式のマウスピース矯正」と「固定式のワイヤー矯正」の2種類があります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあるため、どちらを選択すべきか迷う人も少なくありません。
ワイヤー矯正は幅広い症例に対応できますが、装置が目立ちやすいです。
一方、マウスピース矯正は装置が目立ちにくく、食事や歯磨きの際は取り外しが可能ですが、適応症例が限られています。治療法を選択する際は、歯科医師に自分の希望を伝え、よく相談したうえで決めましょう。
歯のサイズを大きくする
すきっ歯の治療には、以下のような歯のサイズや形を変更する方法があります。
- 歯の大きさに応じてセラミックの被せ物を装着し、歯の形やサイズを変更できる
- 歯の色や形を患者に合わせることが可能であり、審美性が高い
- 歯と歯の間にレジンを接着し、隙間を埋める
- 歯の色に合わせたレジンの使用により、治療の跡が目立ちにくい
- 歯を削る必要がないため、健康な歯を残せる
- 保険適用となることがあり、費用が抑えられる
- 歯の表面を薄く削り、歯と同じ色のセラミックの板を接着するため、審美性に優れる
- 歯を薄く削るため、歯の神経を傷つけることがない
歯の隙間を作らないようにするには?
歯の隙間を作らないためには、隙間ができる原因を理解することが大切です。当てはまる原因がある場合は、対処法を実践することですきっ歯を予防できます。すきっ歯のリスクを軽減することは、全身の健康にもつながるでしょう。
ここでは、すきっ歯のリスクを防ぐための具体的な対処法を解説します。
虫歯・歯周病の予防
歯を失う原因のほとんどは虫歯と歯周病であり、予防することで歯の隙間が生じるリスクを軽減できます。
虫歯に比べ、歯周病は自覚症状がほとんどなく、病気の存在に気づきにくいため、重症化してから治療するケースも少なくありません。
定期検診を受けていない場合、症状が進行して根管治療や抜歯といった大掛かりな治療が必要になる可能性があります。治療期間や通院回数が増え、治療費もかかるため、患者にとって負担になるでしょう。
毎日の歯磨きによるセルフケアと、定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで、口腔内を清潔に保つことが大切です。
舌癖の改善
MFTトレーニングは、口周りの筋肉を鍛え、舌を正しい位置にするのに有効です。
- 口を大きく開けて「あー」
- 口を横に広げて「いー」
- 唇をすぼめて「うー」
- 限界まで舌を出して「ベー」
上記を各1秒間声に出す。10回を1セットとし、1日に3セット行う。
- 舌の先端をスポットにあてる
- 最初に棒でスポットに接触させてから舌をあてるとよい
- 舌全体を上顎に吸着させ、口を大きく開けて舌の根元にある筋を伸ばす
- 舌をそのまま吸い上げていくと、舌がポンッと鳴って下に下がる
これを10回繰り返す。
親知らずへの適切な対処
親知らずを抜歯するだけでは、歯の隙間を改善することは難しく、歯並びを改善するためには歯列矯正が必要になります。
歯列矯正における親知らずの抜歯には、以下のメリットがあります。
- 親知らずがない分、歯を並べるスペースを確保しやすい
- 矯正治療後に親知らずが歯並びに悪影響を及ぼす心配がなく、後戻りのリスクが減る
ただし、親知らずが正常に生えている場合や、親知らずが生えていても上下の歯が噛み合っている場合など、抜歯する必要がないケースもあります。抜歯を検討する際は、歯科医師とよく相談することが重要です。
欠損歯への早急な対処
虫歯や歯周病、外傷など何らかの理由で歯を失った状態を放置すると、できたスペースに周囲の歯が移動し、すきっ歯が進行するおそれがあります。そのため、インプラント、入れ歯、ブリッジなどの補綴治療によって対策する必要があります。
なかでも、インプラントは、人工歯根を顎の骨に埋め込むため機能性と審美性に優れ、正しくメンテナンスを行うことで半永久的に使用できるでしょう。
一方、入れ歯やブリッジは、通常7~8年程度で交換が必要になります。
治療法を選択する際は、それぞれのメリットとデメリットを理解し、自分に合った治療法を選択しましょう。
歯ぎしりへの対処
慢性的な歯ぎしりは、歯に過度な負担がかかり、すきっ歯や歯がすり減るなどのリスクが高まります。
歯ぎしりは無意識に行われるため、自然に治ることは期待できません。
以下の方法で対策するとよいでしょう。
- 歯科医院でマウスピース(ナイトガード)を作成し、睡眠中に装着する
- 趣味、適度な運動などを取り入れ、歯ぎしりの原因になるストレスを発散する
- ストレッチ運動で歯ぎしりにつながる首や肩のこりをほぐす
- 日中は、上下の歯と歯を合わせないように意識する
- 頬杖や横向きで寝るなど顎に偏った力が加わる行動は避ける
すきっ歯に関するよくある質問
すきっ歯で悩みを抱える人のなかには「時間とともに自然に治るかもしれない」と考え放置する人もいれば「費用を抑えて治療できないかな?」と疑問を持つ人もいるでしょう。
ここでは、すきっ歯に関するよくある質問を解説します。
まとめ
すきっ歯の原因は、遺伝、日常生活における習慣、歯並びや噛み合わせの問題など多岐にわたります。
原因は人によって異なりますが、放置すると見た目や発音の問題だけでなく、全身の健康に悪影響を及ぼすおそれがあります。
すきっ歯がある場合は歯科医院を受診し、治療を検討しましょう。すきっ歯の原因を把握し、その原因に合った対処法を実践し、すきっ歯の悪化を防ぐことが大切です。