歯列矯正を検討する際、治療に伴う痛みに対して疑問や不安を抱え、治療に踏み切れないという人は少なくありません。
矯正中の痛みには個人差がありますが、痛みを経験せずに治療を終えることは難しいでしょう。
この記事では、矯正中のつらい痛みの軽減法を詳しく解説します。軽減法を理解することで、治療を中断することなく美しい歯並びを手に入れることができるでしょう。
矯正中の激しい痛みに耐えられないときは?
歯列矯正に伴う激しい痛みに耐えられず、治療を途中で諦めてしまう人もいるでしょう。
せっかく多くの時間と費用をかけて治療することを決心したにもかかわらず、治療を継続できないのはショックですよね。諦める前に痛みの対処法を理解し、実践してみましょう。
鎮痛剤を服用する
鎮痛剤は、歯が動くことで生じる激しい痛みに効果があります。痛みがつらく、日常生活に支障が出る場合は、歯科医院で鎮痛剤を処方してもらいましょう。
鎮痛剤が手元に無く、すぐに歯科医院を受診できない場合は、ドラッグストアで購入できます。年齢や妊婦などの条件によって服用できる成分は異なるため、購入する際は薬剤師や登録販売者に相談しましょう。
矯正治療では、歯を動かすために歯周組織に炎症を起こします。そのため、抗炎症作用の強い痛み止めを頻繁に服用すると、炎症が抑えられて歯が動きにくくなる可能性があります。
胃や腎臓に負担がかかる副作用もあるため、長期の服用は避けましょう。
痛む部分を冷やす
炎症が起きている部分では、血管が拡張して血流がよくなることで神経が圧迫され、痛みが増します。そのため、痛みが激しいときは、痛む部分を冷やして血流を抑えることで痛みを和らげることができます。
冷やす際は、患部を直接冷やすことは避け、頬にぬれたタオルを当てて、間接的に冷やすようにしましょう。
タオルで押さえると手が塞がってしまうため、不便な場合は冷却シートを頬に貼るのもおすすめです。
ただし、冷やし過ぎは逆効果になります。口に氷を含んで患部を直接冷やすと、痛みが悪化する可能性があるため注意しましょう。
一時的に装置を外す
痛みが我慢できないときは、一時的に矯正装置を外し、痛みを軽減することができます。
マウスピース矯正の場合は、食事や歯磨きの際にマウスピースを外す時間を延長したり、就寝前に短時間外したりして対応します。
ただし、長時間外すと後戻りのリスクが高まり、再装着した際に痛みが強くなる可能性があるため、装着時間が不足しないよう意識しましょう。
ワイヤー矯正の場合は、歯科医院で矯正装置を外す必要があります。一度外した矯正装置は再利用できないため、患者の費用負担が増えることを理解しておきましょう。
矯正用ワックスの使用
矯正用ワックスは、矯正装置が口内に当たって痛みや違和感が気になる場合に使用する保護材です。
矯正用ワックスを用いてブラケットやワイヤーを保護することで、口内の傷や口内炎を防ぐことができます。
矯正用ワックスは種類が豊富にあり、インターネットでも購入できますが、最初は歯科医院で購入し、使い方の指導を受けたほうがよいでしょう。
また、矯正用ワックスは、ブラケットが外れそうになったり、ワイヤーが破損したりした際、接着剤として利用できるメリットもあります。トラブルが起きた際の応急処置に役立つ点からも、購入しておくと安心です。
柔らかい食べ物を選ぶ
柔らかい食べ物は噛む力を必要としないため、痛みを感じにくく、食事の途中で矯正装置が外れたり破損したりする心配もほとんどありません。
激しい痛みがあるときは、噛むたびに痛みを感じ、精神的ストレスが増えるため、できるだけ咀嚼を必要としない以下のような柔らかい食べ物を選ぶことをおすすめします。
- 米:リゾット、雑炊、お粥
- 麺類:煮込みうどん
- 肉:ハンバーグなどの挽肉料理
- 魚:白身魚の煮付け、サバやイワシなどの魚の缶詰
- 野菜:煮物、具材を細かく切って煮込んだスープ
- 果物:バナナやすりおろしたりんご
- スイーツ:プリンやゼリー
歯科医院に相談し調整してもらう
治療の開始直後や装置の調整後は、特に痛みが発生しやすいですが、時間の経過とともに徐々に軽減します。
痛みが長引く場合は、矯正装置に問題がある可能性があるため、歯科医院に相談して調整してもらいましょう。
矯正装置が破損した状態で使用を続けた場合、口内を傷つけ、激しい痛みが発生するおそれがあります。
ワイヤーが口内に刺さった際は、矯正用ワックスを使用して応急処置を行い、早めに歯科医院を受診しましょう。
ワイヤーの歪みやプラスチックの傷や亀裂は、歯並びに影響を及ぼす可能性があるため、矯正装置に異常がないか定期的に確認してもらうことが大切です。
歯の痛みを和らげるツボを試してみる
あくまでも応急処置ですが、ツボ押しを試すことで一時的に痛みを緩和できる可能性があります。歯の痛みを和らげるツボの一例は、以下のとおりです。
下唇と顎の間のくぼみにあるツボ。歯を噛みしめ、強めに押す。
手の人差し指と親指の骨の合流部分からやや人差し指側にあるツボ。痛みや刺激を感じる部分を探し、やや人差し指側に向けて揉み続ける。
耳の付け根から指3本分前方にあるツボ。口を大きく開けると骨が持ち上がる部分。口を閉じた状態で押すように揉む。
顎まわりの骨格矯正を受ける
歯列矯正治療は、激しい痛みに耐えたからといって、必ずしも満足のいく治療効果が得られるとは限りません。歯並びは改善されても、歯の変化に伴い口元が下がったり、ほうれい線が深くなったりして老けた印象になり、治療を後悔する人も少なくありません。
痛みに弱い人や、痛みに耐えながら顔の変化に不安を感じている人は、身体への負担が少ない顎まわりの骨格矯正を受けることをおすすめします。
歯並びの土台となる顎の骨格の歪みを改善することで、歯列矯正に伴う口元の歪みを解消します。その結果、顔全体のバランスが整い、すっきりした印象になるでしょう。
「小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」では、顎関節のずれや筋肉のアンバランスが強いと矯正中の痛みや不快感が増幅されるケースに注目し、顎まわりの骨格を優しく整える施術を提供しています。咬筋や側頭筋などの過度な緊張を緩めることで痛みを軽減し、顎が正しい位置に収まりやすい状態を目指します。結果としてワイヤーの力が均等に働くようになり、矯正時の負担を軽減できることも大きなメリットです。また、施術自体は痛みを伴わないため、矯正中でも安心して受けられます。
矯正中の痛みの原因や種類
矯正治療中の痛みの原因は、多岐にわたります。痛みが長引く場合は、歯周組織が炎症を起こしている可能性も考えられるため、放置せずに早めに歯科医院を受診することが大切です。
矯正治療中の痛みの原因や種類を理解しておくことで、適切な対応ができるでしょう。
歯の移動に伴う痛み
歯に矯正力が加わると、歯の進行方向側の歯を支える歯槽骨が破壊され、反対側には新しい歯槽骨がつくられます。
この過程を繰り返すことで歯は移動しますが、歯の周囲では神経や血管が圧迫されて炎症が起こるため、痛みを生じることがあります。
特に、治療の開始直後や矯正装置の調整後は、歯の移動や装置による圧迫が大きくなるため、激しい痛みを感じやすく、勉強や仕事に集中できなかったり、食欲がなくなったりすることも少なくありません。
痛みには個人差がありますが、日常生活や健康に影響が出る場合は、歯科医師に相談することをおすすめします。
矯正装置が粘膜に当たる
ワイヤー矯正は、装置を装着した状態で食事をするため、噛んだ際に矯正器具のブラケットやワイヤーが口内に当たり、痛みや違和感が生じることがあります。
また、口内の粘膜に傷がつきやすくなるため、口内炎による痛みで悩む人も少なくありません。
一方、マウスピース矯正は、飲食の際に装置を取り外すことができるため、ワイヤー矯正に比べ、食事中に痛みや口内炎が発生するリスクは軽減されます。
ただし、装着時にマウスピースの縁が口内に当たることで、口内炎ができることがあるため注意が必要です。
食べ物を噛むときの痛み
ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットと呼ばれる器具を装着し、ワイヤーを通して歯に矯正力を加えることで、歯を正しい位置に動かす仕組みです。
歯に力が加わることで歯周組織に負担がかかり、不快感や痛みを生じることがあります。
特に、治療の開始直後や矯正装置の調整後は、歯に加わる力が大きくなり、食べ物を噛んだ際に歯が浮くような感覚や痛みを感じやすくなるため、食事をすることが億劫に感じる人も少なくありません。
激しい痛みを伴う場合は、噛む力を必要とする硬い食べ物を避け、柔らかい食べ物を選ぶことで食事がしやすくなります。
歯肉炎・歯周炎による痛み
ワイヤー矯正の場合、矯正装置を装着した状態で歯磨きを行うため、歯の清掃が十分に行き届かず、歯垢が蓄積しやすくなります。
歯垢に含まれる細菌によって歯周組織が炎症を起こし、歯肉炎や歯周炎を発症し、痛みや違和感が生じるケースも珍しくありません。
歯肉炎は、歯茎が炎症を起こした状態であり、歯周炎は、歯を支える歯槽骨まで炎症が進行した状態です。 放置すると歯槽骨が溶け、最終的には歯が抜け落ちるリスクが高まります。
痛みや違和感のほか、歯茎の腫れや赤み、出血といった症状がある場合は、早めに歯科医院を受診し、適切な診療を受けましょう。
一時的な知覚過敏による痛み
歯列矯正治療では、歯の移動で歯根が動く際、一時的に歯と歯茎の間に隙間が生じたり、歯と歯の間を削る処置を行って隙間をつくったりすることがあります。
隙間ができることで歯や歯茎に刺激が伝わりやすくなるため、痛みやしみるといった知覚過敏の症状が出現することがあります。冷たい飲み物や食べ物は刺激になるため、できるだけ控えたほうがよいでしょう。
また、矯正治療中は徹底した口腔ケアが大切ですが、強い力で歯磨きをしてしまうと、エナメル質が薄くなったり、歯茎が下がったりして刺激が伝わりやすくなる可能性があります。歯磨きをする際は、優しく丁寧に行いましょう。
咬合の問題による痛み
噛み合わせに問題がある場合は、特定の歯に強い力が加わり、歯茎が炎症を起こして痛みを生じることがあります。
例えば、前歯が突出している、奥歯が内側に傾いているといった症例は、噛んだときに特定の歯に過度な負担がかかります。
また、左右どちらかに偏って噛み続けることによって、片側の歯が徐々にすり減り、噛み合わせが悪化する可能性も否定できません。この状態が続くと、歯槽骨が溶けるリスクが高まります。
対応策として、歯列矯正のほか、削ったり被せたりして歯の高さを調整する治療などもあります。噛み合わせが気になる人は、歯科医師に相談するとよいでしょう。
矯正での痛みの持続期間は?
初めて歯列矯正による痛みを感じたとき、痛みがいつまで続くのか不安を抱える人もいるでしょう。
なかには、痛みや違和感がストレスとなり、治療をやめたいと悩む人も少なくありません。事前に痛みの持続期間を理解しておくことで、治療を継続できるでしょう。
装置装着後3~6時間で痛みが出る
一般的に、痛みが現れる時期の目安は、治療の開始直後や装置の調整後3~6時間程度です。初めて装置を装着する際は、歯科医師に鎮痛剤を処方してもらうと安心でしょう。
歯に矯正力が加わるとともに痛みは強くなるため、痛みが不安な場合は前もって鎮痛剤を服用しておくことをおすすめします。
装置の調整を繰り返すなかで、痛みが発生する時間帯や鎮痛剤を服用するタイミングがわかるでしょう。
歯列矯正は痛みを伴いますが、ずっと続くわけではありません。痛みは、歯が正しい位置に移動する過程で生じるため、治療効果が得られている証拠であることを理解しておきましょう。
1~2日後にピークがくる
装置を装着してから徐々に強くなる痛みに不安を抱える人もいるでしょう。
一般的に、治療の開始直後や装置の調整後は徐々に痛みが強くなり、1〜2日目にピークを迎えることがほとんどです。ピークを過ぎた後は徐々に痛みが軽減します。
痛みがあるときは、血行をよくしたり歯に刺激が加わったりするような行動によって、さらに痛みが増す可能性があるため、以下の行動は控えましょう。
- 過度な運動や長時間の入浴で身体を過剰に温める
- 熱いものや冷たいもので刺激を与える
- 固いものを噛む
- アルコールの摂取
- 強いブラッシング
通常は1週間程度で痛みが和らぐ
歯が動く際の痛みには個人差がありますが、特に、治療の開始直後や装置の調整後数日は、強い痛みが発生することも珍しくありません。
一般的に、痛みは徐々に落ち着き、1週間程度で解消します。最初のうちは大変と感じる人もいますが、1ヶ月程度で食事の際の違和感にも慣れるでしょう。
痛みが長引く場合は、矯正器具が口内に当たっている、虫歯や歯周病を発症しているなど、何らかの口腔トラブルが考えられます。
痛みの原因が虫歯や歯周病の場合は、治療スケジュールに影響が出るため、放置せずに早めに歯科医院を受診しましょう。
矯正治療の痛みについての注意点
歯列矯正を行ううえで痛みを避けることは難しく、美しい歯並びを手に入れるためには、ある程度痛みに耐える必要があります。
痛みの強さはさまざまな要因に左右されます。矯正治療を乗り越えるために、痛みについての注意点を理解しておきましょう。
完全に痛みがない矯正治療は難しい
「歯列矯正=痛い」というイメージを持ち、治療に踏み切れない人もいるでしょう。歯を移動させる際は歯周組織に炎症が起こるため、痛みを一切感じることなく歯列矯正を行うことは困難です。
痛みに弱い人は、治療法を選択する際、比較的痛みが少ないマウスピース矯正を選択するとよいでしょう。
また、食事の際の痛みがつらいときは、食事の前後に鎮痛剤を服用する、柔らかい食べ物を選ぶなど、さまざまな対処法で痛みを軽減することができます。
痛みを感じることで治療が順調に進んでいると前向きに捉え、理想の歯並びを手に入れたときの自分を想像しながら治療に取り組みましょう。
以前より強い痛みを感じることは少ない
歯列矯正の治療方法や治療材料の進歩により、以前と比べ、治療に伴う痛みは軽減しています。
マウスピース矯正は、持続的に弱い矯正力を歯に加えることで、効率よく歯を動かすことができ、痛みが少ない治療法です。
痛みに配慮した治療を行う歯科医院では、マウスピース矯正を推奨していることも少なくありません。
現在のワイヤー矯正では、歯の移動効率に優れ、痛みが少ない矯正用ワイヤーが使用されています。
また、矯正装置による傷や口内炎の問題を解消するため、さまざまな種類の矯正用ワックスがあります。早く固まるタイプのものもあり、痛みに対して迅速に対応できるでしょう。
痛みの感じ方には個人差がある
痛みの感じ方には個人差があり、食事ができないほど痛みがつらい人がいる一方で、ほとんど気にならないという人もいます。
痛みの強さは、症例や治療法によって異なります。痛みが少ないマウスピース矯正は、適応症例が限られているため、複雑な歯列不正では改善が期待できません。治療効果を得るためには、適切な治療法を選択する必要があります。
重度の症例では、ワイヤー矯正によって歯を大きく動かす必要があり、痛みを感じやすくなります。
また、歯を並べるスペースを確保するために抜歯が必要になるケースも少なくありません。抜歯後は痛みが発生する可能性があることも理解しておきましょう。
年齢による痛みの違いがある
歯列矯正では、矯正装置で歯に力を加え、歯を支える歯槽骨が吸収と再生を繰り返すことで歯が動きます。
歯槽骨の吸収や再生のスピードには個人差があり、年齢が若い人ほど骨密度や歯周組織の代謝が高いため、歯が動きやすく痛みが少ない傾向があります。
また、成長期の子どもは、歯や顎の骨が成長段階で柔らかく歯が動きやすいため、顎の成長を終えた大人に比べ、痛みは少ないでしょう。
年齢を重ねるとともに歯は動きにくくなるため、治療期間が長くなり、痛みが長引く傾向があります。歯列矯正治療は、できるだけ早く始めることをおすすめします。
矯正治療中の痛みに関するよくある質問
治療法を選択する際、治療法の種類によって痛みの強さが異なるのか気になる人もいるでしょう。
また、歯列矯正中の痛みの原因はさまざまであり、歯の移動に伴う痛みかどうかわからず、不安を抱える人も少なくありません。
ここでは、矯正治療中の痛みに関するよくある質問を解説します。
まとめ
歯列矯正では、ほとんどの人が痛みを感じます。しかし、痛みはずっと続くわけではありません。痛みが強いときは、痛みの軽減法を実践することで痛みを和らげることができます。
歯列矯正の治療期間は長期であるため、次第に痛みの対応にも慣れていくでしょう。
ただし、痛みが長引く場合は、矯正装置の異常や口内トラブルが疑われるため、早めに歯科医院を受診し、適切な診療を受けましょう。