大人になってから「顎が出てきた」と感じる方は、下顎前突(かがくぜんとつ)や受け口といった歯並びや骨格の問題が原因の一つかもしれません。このような変化は見た目だけでなく、口腔機能や発音にも影響を及ぼすため、早期の治療が重要です。
この記事では顎が出てくる原因やリスク、適切な治療方法について詳しく解説し、矯正や外科手術などの対処法を紹介します。
「自分の顎がしゃくれているかもしれない」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
大人になって顎が出てきた原因とは?
子どもの頃には気にならなかった顎について、大人になってから突然「前に出てきたように感じる」と気になる方は少なくありません。
顎の突出は見た目だけでなく、噛み合わせや顎関節に負担をかけることもあり、早期に原因を突き止めるに越したことはありません。
まずは姿勢や悪い癖など、顎が出てくる主な原因について解説します。自分に該当するものがないか、ぜひチェックしてみましょう。
姿勢不良
頭部の位置が悪いと、顎の位置やアライメント(骨や関節の配列)にも大きな影響を与えます。
たとえば、日常的にスマホやパソコンを長時間使用し、前かがみの姿勢で過ごしていると、首の筋肉が緊張して頭が前方に突き出た状態になります。結果的に下顎も前方に移動し、結果的にしゃくれが強調されてしまうことも。
特に、こうした姿勢不良が慢性的になると顎の骨格や筋肉にも影響を与え、骨格のバランスが崩れやすくなります。
放置しておくと顎関節症のリスクが高まり、噛み合わせや発音にも悪影響を及ぼす可能性があるため、日頃の姿勢改善に努めなければなりません。
悪習癖
悪習癖とは無意識に行っている癖のうち、歯並びや噛み合わせに悪影響を与える癖のことです。常習化すると、顎の変形や噛み合わせの乱れを引き起こしかねません。
たとえば、無意識のうちに下顎を前に突き出す癖があると、日常的に顎に余計な力が加わり、徐々に顎骨(がっこつ)の位置が前方にずれてしまいます。
そのほかにも、以下のような癖は顎の成長に悪影響を与える要因となります。
- 爪を噛む
- ペンや指をくわえる
- 唇を噛む
- 爪を噛む
- 頬杖をつく
- 歯ぎしりをする
これらの悪習慣を続けていると、下顎前突や反対咬合(はんたいこうごう)といった不正咬合(ふせいこうごう)を引き起こし、歯並びや噛み合わせが悪化しやすくなります。
遺伝的な要因
顎が出てくる原因には遺伝的な要因も大きく関与しています。家族に下顎前突や反対咬合の方がいる場合、同じような症状が発現しやすくなるためです。
遺伝的要因には顎の形状や骨格の成長だけでなく、舌の形や機能も関係しています。
特に、舌が短い「舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)」があると、下顎が正常な位置に維持できずに前方へ突出しやすくなります。
遺伝的要因を持つ方は大人になる過程で下顎が前に突き出し、噛み合わせに異常が生じるため、早めに歯科医や口腔外科医に相談しましょう。
全身のバランス崩れ
顎の位置は、全身の骨格や筋肉のバランスと密接に関連しています。
骨盤が歪んだり背骨が湾曲したりすると頭や顎の位置もバランスを崩し、結果的に顎が前方にずれやすくなるのです。
こうした全身のバランス崩れは姿勢や生活習慣によって引き起こされることが多く、放置すると顎の形以外にも次のような悪影響を及ぼします。
- 肩こり
- 腰痛
- 偏頭痛
- 顎関節症
骨格のバランスを整えるためには、日常的なストレッチや筋力トレーニングが効果的といわれています。
また、骨格矯正によって歪んだ骨格を正しい位置に戻し、身体全体のバランスを改善することも症状緩和の対策としておすすめです。
歯並びや噛み合わせの問題
冒頭でもお伝えしたとおり、噛み合わせの問題で顎が前に出る状態は下顎前突と呼ばれ、一般的には反対咬合や受け口、しゃくれともいわれます。
下顎前突には、以下のような特徴があります。
- 下の歯が上の歯よりも前に出ている
- 食べ物を噛んだり飲み込んだりするのが難しい
- 口を閉じにくい
- 話しにくい
- 「サ行」や「タ行」の発音が難しい
- 余計な力が入り歯にダメージを与えやすい
下顎前突は、2種類あります。
- 歯性タイプ:歯のかみ合わせだけが逆になっている
- 骨格性対応:骨格の成長に問題があり下顎が過剰に成長している
この状態を放置すると顎が目立つことで自分の顔にコンプレックスを感じたり、顎関節症のリスクが高まったりするおそれがあります。
大人になって顎が出てきた場合のリスクは?
顎の位置が正常でないと噛み合わせや顎関節に影響を及ぼし、日常生活にも支障をきたしやすいです。放置すると症状が悪化し、長期的な治療が必要になるケースもあります。
ここでは、顎が出てきた際に考えられる具体的なリスクをみていきます。
顎関節症
顎の突出が進行すると顎関節症のリスクが高まります。顎関節症とは、顎の動きに異常が生じ、口を開閉する際に痛みや不快な音が発生する症状です。
顎の位置が適切でない場合、顎関節に過度な負担がかかり、顎関節自体の軟骨や筋肉が損傷する危険性があります。
さらに、顎関節症を放置すると食事や会話など日常生活に支障をきたすだけでなく、治療が長期化するリスクも高まります。
歯並びの悪化や虫歯
顎の位置が前方にずれると歯並びが悪化し、虫歯や歯周病のリスクが増加します。
上下の歯が正しく噛み合わないと歯の一部に過度な負担がかかり、歯磨きがしづらくなり、歯垢や歯石がたまりやすくなるためです。
これらは虫歯や歯周病の原因にもなるため、口腔内の健康が大きく損なわれる可能性があります。
歯並びを整えるためには矯正治療が効果的といわれているため、早期に治療を開始することをおすすめします。
滑舌の悪化
顎が前方に突出する発音にも悪影響を与え、滑舌が悪くなる方もいます。下顎前突や反対咬合の方は前歯の位置が正常でないため、特定の音を正確に発音することが難しくなるためです。
特にサ行、タ行が発音しにくくなるといわれており、日常生活でのコミュニケーションにも支障をきたすおそれも。
こうした発音の問題を改善するためには、歯並びや顎の位置の矯正が有効です。
肩こりや頭痛
顎の位置がずれると首や肩の筋肉に過度な負担がかかり、慢性的な肩こりや頭痛を引き起こしやすいです。
顎関節や骨格のバランスが崩れると、首や肩の筋肉が常に緊張状態となり、血行が悪くなるため、痛みを伴うことも。
さらに、肩こりや頭痛は日常生活の質を大きく低下させる要因となり、長期間放置することで症状が悪化しやすいです。
骨格バランスの崩れによる審美的問題
顎が前方に突出すると、顔全体の輪郭に大きな影響を与えます。特に横顔のバランスが崩れて顎がしゃくれたようになり、見た目に自信を失う方も少なくありません。
こうした骨格の異常は、美容的な悩みとして多くの方に深刻なストレスを与えます。
骨格のバランスを改善するためには、矯正治療や外科的手術が必要になる場合もあり、早期の治療が改善につながります。
大人になって顎が出てきた症状の対処法
大人になって顎が前に出てきた場合、見た目や健康への影響が気になる方も多いでしょう。
症状を改善するためには、症状の原因に応じた適切な治療が必要です。美容整形手術や歯科矯正、骨格矯正などさまざまな対処法がありますが、それぞれの治療にはメリット・デメリットがあります。
ここでは、各方法について詳しく解説しますので、自分のニーズや費用に応じてご検討ください。
美容整形手術
顎が著しく前に出ている場合、美容整形手術が選択肢としてあげられます。この手術では顎骨の厚さや形を整えるために、外科的に削って顔の輪郭を修正します。
メリットとしては顎の突出を解消し、バランスの取れた顔立ちに改善できる点があります。コンプレックスが軽減され、見た目の大きな変化が期待できるのも魅力です。
しかし、手術には身体への負担が大きく、痛みやダウンタイムが伴うデメリットもあります。また、感染症や後遺症などのリスクもあるため、事前のカウンセリングやリスク確認が重要です。
歯科矯正
顎の出っ張りが歯並びや噛み合わせの問題から生じている場合、歯科矯正が有効です。矯正歯科ではワイヤーやマウスピースを使って歯を正しい位置に移動させ、噛み合わせを改善します。
この方法のメリットは軽度の下顎前突や反対咬合において、審美面と機能面の両方で改善が期待できる点です。手術に比べてリスクも少なく、身体への負担も軽いです。
一方で、デメリットとしては治療期間が数年かかることがあり、時間的な負担が大きいことがあげられます。また、顎の変化については歯科医の診断が必要であり、必ずしも効果が得られるわけではありません。
骨格矯正
骨格の歪みやバランスの崩れが原因で顎が出てきた場合、骨格矯正がおすすめです。
姿勢の悪さや全身の筋肉のアンバランスが顎に影響を与えている場合、整体やカイロプラクティックが有効です。体全体のバランスを整えることで改善が期待できます。
メリットは手術や歯科矯正に比べて身体への負担が少なく、自然な方法で体全体のバランスを整えられる点です。
ただし、一般的には効果が現れるまでに時間がかかることがあり、継続的なケアが求められる点も見逃せません。
「小顔整顔専門サロン AGO TOKYO SALON」では、顎関節の歪みを整える際に足の指から施術を行います。身体のパーツを一つひとつ丁寧に揃えていくことで、顎関節部の歪みの元になっている土台部分からアプローチします。また、それぞれのお悩みや状態に合わせて、カスタマイズした施術を行います。
口周りの癖が直るとセルフ改善できることもある
顎の突出や歯並びの問題は、必ずしも手術や矯正だけで改善するものではありません。
実は、日常生活の中で知らず知らずのうちに続けている「口周りの癖」が、顎や歯の位置に影響を与えるのです。こうした癖を改善するだけで、顎の突出や歯並びの乱れが軽減される場合もあります。
最後に口周りの癖がどのように顎に影響を与えるか、具体的な改善方法について解説します。ぜひ参考にして、舌の使い方や口の動きに気を配ってみましょう。
舌の癖
舌の位置や使い方が間違っていると、顎や歯に悪影響を与えることがあります。
特に、舌の先が日常的に自然と上下の歯の間についている「舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)」は、歯並びや噛み合わせに影響を及ぼし、反対咬合や受け口の原因になりやすいです。
また、舌が短い「舌小帯短縮症」があると自然に顎や歯に力がかかり、顎が前に出てしまうことも。舌の癖を改善するためには、常に正しい舌の位置を意識しましょう。
なお、正しい位置は次の方法で確認できます。
- 鏡を用意し、歯を軽く噛みしめた状態で唇を開く(「イー」の口の形)
- そのまま唾を飲み込む
もし歯の隙間から舌がはみ出して見えたり、舌が歯に触れたりしている感覚があれば舌突出癖の可能性が高いです。
口周りの癖
口周りの悪習慣が顎の突出や歯並びに影響を与えることもあります。
たとえば、爪を噛む癖や頬杖をつく癖や無意識に下顎を前に出す習慣は、顎に不自然な圧力をかけて顎の位置を変えてしまいます。口呼吸も口周りの筋肉を不均等に使うため、顎や歯の位置に影響するのです。
さらに、口呼吸は鼻のフィルターとしての役割が十分に機能しないため次のリスクも高まります。
- 口腔内の炎症や乾燥
- 虫歯(う蝕)
- 歯周病
- 口臭
まとめ
大人になって顎が出てきた場合、その原因に合わせた適切な対処が必要です。
姿勢の改善や口周りの癖を直すだけでも効果を感じられる方もいますが、顎の悩みを放置すると見た目や健康に悪影響を及ぼすことがあります。
早めに専門家に相談し、最適な治療方法を見つけてください。